インドネシアから始まった
大容量インクタンクの技術的課題

 大容量インクタンク搭載プリンタ(以下タンク型プリンタ)を開発するにあたっては、以下のような技術的課題があった。

 第1に、長期間インクを劣化させないことであった。同製品には、約2年分のインクが同梱されており、インクを劣化させないために、蒸発を防ぎ、空気を混入させない素材を開発した。

 第2に、タンク内のインクの水位によって圧力が変化するため、インクを供給する圧力を一定にする機構を開発した。

 第3に、インク補充時にユーザーが手を汚さないように、チューブの外形も工夫した。

 こうした技術的課題を克服し、2010年、エプソンはタンク型プリンタをインドネシアで発売した。本体価格は従来機の2~3倍したが、大量印刷するユーザーに歓迎され、徐々に外付け業者のシェアを奪っていった。

 ビジネスモデルの切り替えにあたっては、ユーザーに対しては、1年間保証とエプソンブランドの信頼感が決め手となった。また、流通業者に対する説明も必要だったが、彼らも消耗品のリピート購買がない中で、高単価の本体を販売することを歓迎してくれた。

 その後、エプソンはタンク型プリンタの販売地域を拡大し、現在はほとんどの新興国で主力機として販売している。エプソンの戦略転換を静観していたブラザー工業、キヤノンも2015年に東南アジアで追随し、ヒューレット・パッカード(HP)も2016年に追随した。

 エプソンはタンク型プリンタの発売以降、従来のジレットモデルのプリンタの販売をインドネシアでは縮小したが、純正のインクカートリッジ比率が高い他の新興国地域では、両タイプを併売している国もある。