ただ、中国は原則的政策を堅持するときでも柔軟性をもたせる必要性を認めている。その柔軟性とは、原則的政策を逸脱しない範囲内でのものである。現在の中国の「原則問題」は日中関係で言うと、歴史問題での中国の「原則問題」は過去の戦争の過ちを認めるという点、また領土問題でのそれは「領土問題は存在し、話し合いによって解決する」というものである。

 第四に、あらゆるメディアを利用して「世論戦」を展開することである。中ソ両党の論争が公開論争に発展して以降、両国は国内のあらゆるメディアを使って相手国の主張を批判する記事や評論を掲載し、一種の「世論戦」を展開した。

 当時の中国共産党が発表した論文は「互いに相手が自己を批判した文章をぜんぶ発表し、全国人民、全世界人民に考えさせて誰がまちがっているかを判断させようではないか」と述べ、メディアを駆使した「世論戦」に肯定的だった。それは先ほど述べた自らが「原則問題」では間違っていないという自信があるためであると筆者は考える。

 こうした「世論戦」も、2012年9月に日本が尖閣諸島の「国有化」を決めた後に『釣魚島は中国固有の領土』と題する白書を発行し、日本の尖閣諸島「国有化」を批判する評論が中国メディアで多く出たことに似ている。

 以上、時代背景が異なるためやや乱暴な形ではあることは承知しているが、国際共産主義運動の論争の中での中国の闘争のやり方は、現代中国の外交にも同じような傾向が見られるのではという問題意識から、あえて中ソ論争を取り上げてみた。

 中国は改革開放以降、資本主義国との交流も多くなり、また経済・政治的にも国際的地位が向上し、「独自のスタンダード」を押し通すなら、「国際ルールを無視している」という批判がくる。しかし、長い間培った思考は容易に変えられるものではないし、中国がすでに世界に影響を与える大国になったが、その位置づけにまだ慣れていないという要因もあって、世界各国の理解を得られるには長い時間が必要ではないかと思う。

現代に生きる毛沢東の「二分論」
今後の日中関係は共通の利益を探すことが必要

 ここまで中国共産党の「底線」に触れた相手に対する「闘争」について中ソ論争を例にとって見てきたが、ここでは日本との関係について簡単に見ていく。

 今年の全人代で李克強首相が指摘したように、日中関係はまだ脆弱な状態にある。習政権発足当初は尖閣問題や靖国参拝問題など「原則問題」の影響を受け、日本に対しては厳しい姿勢をとり、2014年の全人代の「政府活動報告」では名指しこそ避けたが、明らかに日本を批判するくだりがあった。当時は先ほど述べたような「世論戦」が繰り広げられたが、現在は日本を批判するもののそれほど厳しくはなく、加えて首脳同士の会談も途切れていないため、両国関係の「最悪な時期」は脱したといえる。