1927年、米国人のチャールズ・リンドバーグは、プロペラ機で大西洋を横断してニューヨーク・パリ間の無着陸飛行に成功した。
この挑戦は、ニューヨークのホテル王レイモンド・オルティーグ氏が主宰する賞金レースだった。多くの飛行士が参加する中、勝者のリンドバーグは2万5000ドルを手にすることになった。リンドバーグが降り立ったパリのル・ブルジェ空港には当時、100万人とも言われる観客が集まったという。それほど注目のイベントだったのだ。
そして、この成功を機に世界の航空機産業が爆発的に伸びていった。また、レースの1年後にはパイロット応募が約3倍になり、飛行機登録は約4倍に増加。3年後には飛行機の乗客数は約30倍に増加した。
賞金レースがきっかけとなって、ひとつ産業が伸びていく──。この先例に倣って今、「Google Lunar XPRIZE」というプロジェクトが進行している。米グーグルがスポンサーとなっているNPO法人「Xプライズ財団」が主宰する世界初の民間月面ロボット探査レースだ。
レースのミッションは「(1)2017年末までにロボットを月面に着陸させ、(2)着陸地点から500m以上移動させて、(3)高解像度の静止画・動画を地球に送り返すこと」。これを最も早く完遂したチームには、賞金2000万ドル(約20億円)が与えられる。
現在、世界10ヵ国から16チームがエントリーしているが、日本からは1チームだけレースに挑んでいる。
それが、月のうさぎ「白兎」にちなんだチーム名を冠した「HAKUTO(ハクト)」。HAKUTOは、2015年1月に発表された中間賞で、モビリティ部門で中間賞を受賞、50万ドル(約5000万円)を獲得した。
中間賞を受賞したのは、HAKUTOのほか、「アストロボティック」(米国)、「ムーンエクスプレス」(米国)、「チームインダス」(インド)、「パートタイムサイエンティスト」(ドイツ)の計5チームで、これらのライバルと共にハクトは優勝候補の一角とみなされている。
そのHAKUTOのチームリーダーで、宇宙ベンチャー「アイスペース社」の代表を務める袴田武史氏に、最新の状況について話を聞いた。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 深澤 献)