経営×統計学

【文系でもできる】住まい探しからプレゼンまで人生を変えるエクセル統計術

自己満足の分析に陥るな
相手に伝わることが重要

 しかし、活用する際に注意が必要な点がいくつかある。中でも最も重要なのは、「伝える相手のことを常に考えること」だと、柏木さんは語る。

 せっかく統計手法を用いて資料を作ったのに、なぜか相手に響かない──。そんなことはよくある話。皮肉なことに、高度で複雑な分析をすればするほど、その結果を聞いた相手には意味が伝わらないのだ。

 とはいえ、何かを分析しているとついつい没頭してしまい、無駄に時間をかけて小難しい資料を作ってしまいがちだ。そこで、「相手に伝えたいポイントは何か、そのために必要なデータや分析は何なのか、ゴールを見失ってはいけない」と、柏木さんは警鐘を鳴らす。

 ビジネスの現場であれば、あなたのゴールは自分の提案に対して、直属の上司や会社の役員、時には社長にGOサインを出してもらうことだろう。忙しい相手の耳に入れて迅速に判断を下してもらうには、「シンプルな分析や見せ方を心がけることが、結果的にメッセージを理解してもらいやすい」(柏木さん)のだ。

 相手に理解してもらうことと、自分が使いやすいこと。その両立が統計を仕事で有効に活用していく上での最適解というわけだ。

 ビジネスの現場で統計のプロたちが有効活用しているケースというのも、相手に分析結果を見せるというよりは、自分が提案しようと思っている中身が根拠のあることなのか、確認する目的のほうが多いという。

 もう一つ、回帰分析の結果はすべてを説明してくれるわけではないということも、心に留めておいてほしい。

 マンションのケースでいえば、家賃というのは駅からの距離だけではなく、デザインや周囲の環境など多くの要因で決められる。それでもあえて、駅からの距離だけに絞って家賃との関係を見るので、ある程度は精度に目をつぶらざるをえないのだ。

 ただ、実務で使う分には厳密な精度を高めていくよりも、ざっくりと数値の関係性と傾向を把握することのほうが役に立つ場合が多い。図2‐8に書いた注意点も含めて、これらのことに気をつけて使えば、回帰分析は日常生活においてもビジネスの世界においても、あなたにとって強力な“武器”になることは間違いない。

(記事転載元:『週刊ダイヤモンド』2013年3月30日号特集「最強の武器 統計学」P55~57/編集スタッフ:清水量介、鈴木崇久、深澤 献、藤田章夫)

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週刊ダイヤモンド編集部


基礎から学ぶ統計学“最強”入門

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