抹茶に似た、けれどもまた別の鮮やかな緑色をした粉山椒

 完全な手作業によって丁寧に枝や種を除去していく。そうして外皮だけになった山椒が石臼にかけられるのである。室内には山椒のいい香りが漂う。

 石臼というのも重要である。石は熱を持たないので、色や風味を残すことができるのである。これほど一般的な市販品との味の違いが大きい香辛料も珍しいが、その差はこうした工程で生まれる。

 出来立ての粉山椒は鮮やかな緑色。辛味や刺激よりも引き込まれるような香りが印象的である。なるほど緑のダイヤは携わる人々の手によって磨かれて、尊い輝きを放つ。

 こうして出来上がった商品を消費者と繋ぐのが、販売を担当しているうおくに商店の見澤さんの仕事である。うおくに商店は創業昭和21年、乾物屋として70年、初代が魚屋として商いをはじめてから(うおくにという名前はそこに由来する)95年になる老舗で、四代目になる見澤さんも土田さんと同じ娘婿という立場で乾物屋を継いだ。

「子どもができたことで、小さいころ自分たちが家で食べていたものがいいものだった、と気づいて。でも、そうしたものを買おうとしても売ってないんですよね。それでなら自分でやろう、と思ってこの商売をはじめたんですけどね。和歌山で育っていながらこの山椒は知らなかったんです。最初、すごくびっくりして。これは是非、扱いたいということで。山椒はスイーツとか色々と使えるので、面白いですよ」

山本勝之助商店の山椒はうおくに商店のネットショップで購入することができる

 山椒は夏場に売れることから冬場にも、ということで七味唐辛子を開発する他、実山椒のペーストやジャムなども販売し、催事などで全国の百貨店なども回っている。小さな石臼を持ち込んで、挽きたての山椒を消費者に味わってもらう、というわけだ。山椒は油脂分と相性がいいので、クリームチーズやバターに混ぜてもおいしい。見澤さん曰く、バニラアイスやポテトチップスにかけても楽しめる、とのこと。

 山本勝之助商店の店内に張られていた賞状にこんな文面があった。創業者、山本勝之助は「国家百年の計は「山に木を植えるにしかず」と喝破し」ていたという。なるほど木を植えることは未来にバトンを渡すこと。よい食べ物を買い、おいしい食べ物を味わうことは、この尊い食べ物を未来へと繋げることでもある。