イクメンをめぐる様々な動きは、社会の意識をどこまで変えるか。これからの動きに注目したいところだ。

 昨今、イケメンならぬ“イクメン”という単語がメディアを賑わせている。一般でもすっかりお馴染みになったが、これはご存知の通り「子育てをしながら自己を成長させる男性」を指すものだ。どうやら最近では、育児参画の重要性が想像以上に大人の男性たちに浸透しているようなのだ。

 まず、日本の行政やビジネスの世界で、重要ポストにある著名人たちが次々に育休を取得する動きがあった。東京都文京区の成沢広修区長(44歳)が第一子誕生を受け、今年春に2週間の育児休暇を取得。自治体の首長が育休をとるのは、日本でも初めてのことという。

 さらには、グループウェアで知られる東証一部上場企業のサイボウズでは、青野慶久社長(39歳)が、この夏長男誕生を機に2週間の育児休暇を取得した。こちらも大いに話題を集めたが、同社は育休を最長6年とれる制度をスタートさせるなど、以前より社員の柔軟な働き方を強く推奨している。

 彼らのように、影響力を持つ人物が自ら休暇をとることで、子どもを持つ男性の育休取得促進に一役買うことになる。今年6月からスタートした「子ども手当」の支給は、民主党政権の目玉の1つとなったが、同様に厚生労働省でも育児するパパたちを応援している。その名も「イクメンプロジェクト」。キーワードは、「育てる男が、家族を変える。社会が動く。」だ。

 昨年の育児・介護休業法改正に伴い、今年6月に新制度「パパ・ママ育休プラス」が導入された。これに合わせ、育休を取得しやすい環境作りを目指し、厚労省が同月にこのプロジェクトを発足させたのだ。

 昨年度の男性の育児休業取得率はわずか1.72%であったが、2017年度には10%に上昇させるという目標を掲げ、有識者を集めて多彩な活動を展開する。

 また、日本のイクメンを語るときに忘れてはいけないのが、草分けとも言えるNPO法人のファザーリング・ジャパンの存在である。

 前述の厚労省イクメンプロジェクトの中心メンバーでもある安藤哲也氏が、発起人となり、2006年に発足した。ファザーリングとは、「父親であることを楽しむ」という姿勢。数々のセミナーなどを通じて、日本社会に変革をもたらそうと、積極的な活動と啓蒙を行なうソーシャル・ビジネス・プログラムを提供する。

 自身も3児の父である安藤氏は、男性の育児参画に関する日本の第一人者であり、一貫して子育ての意義の大きさを提唱してきた。筆者は安藤氏の講演を聞いたことがあるが、自然体で育児を楽しむ姿が非常に印象的であった。

 こんな男性が増えることで、今後日本の家族のカタチも変わり、ゆくゆくは社会もきっと変わるに違いない……。そんな期待感も自ずと高まる。男性が育児参画を望むことは、成熟社会の必然とも言えるだろう。子育てを取り巻く時代の大きな変遷に、感慨を抱かずにはいられない。

(田島 薫)