創業は明治25年という老舗

 大金はだいきんと読む。おおがねではない。創業は明治25年(1892年)。浜町と人形町の中間に位置している。明治25年と言えば日清戦争が起こる以前で、伊藤博文、松方正義、山縣有朋など明治の元勲がまだピンピンしていた頃だ。当時から鶏肉の料理を出していたのだが、そのなかの「きじ丼」はどうやら雉肉だったらしい。

 サービス係として働いている鈴木文子さんは言う。

「うちのおじいさんがそう言っていたような気がするの。きじ丼って、いまは焼き鳥丼のことだけれど、昔はほんものの雉肉を出してたって。でも、私は食べたことがないから、どんな味かはわからない」

日本橋浜町の鶏料理一筋の老舗で、<br />ボリューム満点の鶏肉三昧を。<br />宴会も可能な楽しい庶民派食堂

 フランス料理ではジビエのひとつとして雉(フェザン)を食べる。濃厚なソースで味付けしてある。わたしは何度か食べたことはあるけれど、「なるほど」と思っただけだ。ただし、一度だけ「おいしい」と思った雉肉がある。その雉はどんぐりを餌にしていた。鶏、鴨はどんぐりを食べない。くちばしでどんぐりの殻を割ることはできないからだ。だが、大型の雉は食べることができる。そのせいか、わたしが食べた雉肉はイベリコ豚のベジョータみたいなナッツの味がした。

 さて、話は大金に戻る。代表取締役で料理長の鈴木裕俊は言う。

「うちは鶏肉料理の店です。人形町には鶏肉屋さんが多いから、競争しています。どこで食べても安くておいしいから、それなりの特色がなくてはいけない。うちの特色は量が多くて安いこと。近所のサラリーマン、久松警察の警察官が常連さまです」

 大金が使っている材料は鶏肉、玉子、海老、野菜などである。

 たとえば、かつ重(810円)のかつはチキンカツ。天重(880円)の天ぷらは鶏と海老、玉ねぎ、しいたけ。ミックスフライライス(930円)はチキンカツとエビフライのミックス。鶏肉のおいしさを追求している店と言っていい。