DC分を翌年に受け取ると
トータルの税金は少なくなることも!

 では、個人型DCを退職一時金支給の翌年に受け取った場合はどうなるのか(ケースC)。税法の面倒なルールは、退職所得控除の年数の取り方だ。

 退職一時金の退職所得控除は、勤続年数30年だから1500万円。個人型DCの加入期間は40~60歳までの20年だが、前年以前14年以内に退職一時金を受け取っていると、加入期間が重複している年数を差し引くことになっている。重複期間は20年なので、個人型DCの288万円は退職所得控除の金額はゼロとなる。

 個人型DCの受取時に非課税枠がまったく使えないとすると、ケースCはケースBよりも税金が多くなるような気がするが、実際には同じ年に受け取るより少なくなる。個人型DCを翌年に受け取るケースCでは、2年分の税金の合計額は61万8500円と、同じ年に両方受け取るよりも、13万6000円も少ない。

 翌年に個人型DCを受け取ったときに退職所得控除は使えないが、退職金の半分を退職所得としてみなす優遇は使えるため、所得税の税率が低くなるからだ。

 すべての事例でDC分を翌年以降にずらして受け取ったほうが有利となるわけでなく、同じ年に受け取ったほうがトータルの税額を減らせるケースもあり、ややこしい。

 たとえば、勤続年数38年(退職所得控除2060万円)で退職金が1000万円というケースなら、退職所得控除の枠は1060万円分余るため、その範囲であれば個人型DCを一緒に受け取っても税金はゼロなので、同年受け取りがいい。

 また、個人型DCを一時金と年金受け取りに組み合わせる方法もあるが、注意したいのは公的年金と合算した雑所得となること。税金が多くなるだけでなく、国民健康保険や介護保険の保険料負担も増える場合がある。

 ここまで読んで「なんて面倒なんだろう」と感じたに違いない。私も書きながらたまに混乱することがある。

 将来、退職金や個人型DCを受け取る際には、誰だって自分にとってベストな選択をしたい。しかし、複雑な税額計算のルールを知って試算をできる人などほとんどいないだろう。個人型DCの受取時は「税金も有利」というより、むしろ大きな落とし穴になりかねない。

 厚生労働省は、複数の受け取り方についてそれぞれの税金を試算するシミュレーターをサイト上で作るべき。たとえば、国土交通省は「すまい給付金」をスタートさせたときに、年収とローンの条件などを入力すると、住宅ローン控除で受けられる減税額とすまい給付金を試算できるサイトを作った(今でも使える)。

 それまで、住宅ローン減税を受ける人は自分が受けられる減税額を事前に知りたいがその術がなかったので、これはとても便利なツール。このシミュレーターを使ってみたとき、失礼ながら「なんだ、やればできるんじゃない」と思った。すまい給付金の利用者のためのサービスなのだが、それにはローン減税額を算出するプロセスが必要だから、両方試算できるようになっている。

 厚生労働省の担当者さん、課税の仕組みをシンプルにするか、受け取り方法を選択できるような税額試算シミュレーターの作成をお願いします!(課税の仕組みを変えるのがベストですが…)。