リモートワークの浸透に伴い、文書のデジタル化、ハンコ・署名の電子化が進んでいることを受けて、「法務・契約領域のDX」を検討し始めた企業も少なくないだろう。しかし、法務・契約領域のDXは単なる業務のデジタル化だけでは進まず、クリアしなければならない「課題」がある。こうした課題に加え、紙文化が根強く残る業界にもかかわらず、法務・契約領域のDXを進めた2社に話を聞いた。(編集・ライター ムコハタワカコ)
脱ハンコは入り口に過ぎない
契約領域のDXを阻む2つの要因
コロナ禍でリモートワークが浸透し、業務変革のスピードが速まる中、文書のデジタル化、脱ハンコ化は着実に進んでいるように見える。では、契約領域のDXはどの程度進んでいるのか。
矢野経済研究所が2020年11月に発表した電子契約サービス市場に関する調査結果では、2020年の市場規模を100億円超と予測。全社的にサービス導入を決める企業が増えていると考えられる。
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だが、企業の現場では、契約領域のDXを阻む課題がまだまだ残っている。法務・契約周りのDXの現況と課題について、クラウド型の契約マネジメントシステム「ホームズクラウド」を提供するHolmes代表取締役CEOの笹原健太氏は、次のように語る。
「ハンコをなくそうという動きは誰にでも分かりやすい。一方でハンコがなくなったとしても、それだけでは契約周りの本質的な課題は解決しない。脱ハンコは契約周りのDXの入り口に過ぎない」(笹原氏)
契約領域のDXを阻む要因として、笹原氏は「利害関係者が多いこと」「工程が多いこと」の2つを挙げる。
契約締結に当たっては、起案、確認、承認など、社内外の複数の部署が関わることになる。また契約を締結すれば終わりではなく、締結した内容通りに滞りなく納品や入金を履行するための担当者も、契約の関係者となる。