巨大テクノロジー企業をどう手なずけるか、安易なGAFA分割論は禁物写真左からアップルのティム・クックCEO、トランプ大統領、マイクロソフトのサティア・ナデラCEO、アマゾンのジェフ・ベゾスCEO。2017年6月撮影 Photo:Abaca/AFLO

 インターネットはかつて偉大な民主化のツールとして賞賛されていた。革新的なスタートアップ企業が既存企業と競争し、産業全体を揺さぶり、新たな産業を生み出す、と。だが、そうしたスタートアップの一部は巨大企業へと成長し、インターネットの力を逆に利用している。

 競争の場を公平にするどころか、インターネットは今や巨大テクノロジー企業の手中に陥り、経済を民主化するのではなく、世界の格差問題をさらに悪化させる結果となっている。

 巨大テクノロジー企業の成長は少数の人々を非常に豊かにした。その中でも最も裕福な1人、アマゾン・ドット・コムのオーナーであるジェフ・ベゾス氏は先週、たった1日だけで70億ドルの損失を被った。ブルンジやシエラレオネなど複数の国の国内総生産(GDP)合計を超える額である(ブルンジとシエラレオネのGDPはいずれも30億ドル台)。

 それでもなお、結果としてジェフ・ベゾスが直面する最大のリスクといえば、グローバルな富豪ランキングで2位に落ちることだけだ。1位は、やはりテクノロジーで財をなしたビル・ゲイツ(マイクロソフトの共同創業者兼元会長兼顧問)である。

 一方、2015年の時点では約7億3600万人の人々が依然として極度の貧困状態(1日1.90ドル未満で生活)に置かれている。アマゾンなどのテクノロジー企業で働く下級従業員やウーバーなどのプラットフォームを使って顧客を見つけているフリーランス労働者を含め、世界中の多くの労働者は、貧困と労働条件の悪化、賃金の停滞に直面している。所得に占める労働者のシェアが減少するにつれて、資本家のシェアは増大している。これは特に富裕層に有利なトレンドである。

 大手テクノロジー企業が競争を阻害するだけの力を持っていることを考えると、こうしたトレンドを反転させるには、政府による介入が必要だ。そして実際に、2020年の米国大統領選挙に向けては、巨大テクノロジー企業を「手なずける」ことが大きな争点になっている。特にバーニー・サンダース、エリザベス・ウォーレン両上院議員(私見では、ドナルド・トランプ大統領への挑戦者として民主党の指名を受ける二大有力候補)は、大手テクノロジー企業の分割を求めている。