DXで顧客起点のビジネスモデルに転換
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デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みはすなわち、会社のビジネスモデルの大変革だ。会社が変われば、そこに勤める人たちの働き方も変わる。デジタル時代に求められるビジネスマンの必須能力とは何か。野村総合研究所の此本臣吾会長兼社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 重石岳史)

――コマツはデジタルトランスフォーメーション(DX)の「先頭集団企業」の一社かと思いますが、他業界でもそうした企業はあるのでしょうか。

 私どもがお手伝いしたという意味でいえば、化粧品メーカーの資生堂さんですね。「ワタシプラス」というオンラインショップを立ち上げており、そこには数百万人のオンライン会員がいらっしゃるかと思います。

 そこでは例えばAという商品を買っていただいたお客さんは、2、3ヵ月後にBという商品、Cという商品を買ってくださる可能性が高くなるといった顧客別のデータ分析ができます。そうしたアルゴリズムに対応し、今までリアル店舗だけではできなかったような、一人一人に即したデジタルならではのマーケティングが可能となる。

 つまり「コンシューマーセントリック」(顧客起点)の強化です。

 資生堂さんにはボランタリーチェーン(VC)という流通チャネルがあり、そこでビューティーコンサルタントが商品の良さを伝えてくれれば業績は伸びるというビジネスの組み立て方でした。それを、顧客とダイレクトにつながることで顧客の動きをデータとして蓄積し、それを分析して施策を展開する、顧客起点のビジネスモデルにつくり替えているわけです。

経営者は今、非常に厳しい決断を迫られている
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 最近よく使われるサブスクリプションというのは、顧客と絶えずつながりながらデータを蓄積し、そこから顧客別にいろいろなビジネスを展開するための手段です。

 コマツと資生堂で共通するのは、根幹にあるのがビジネスモデルの転換ということなんですね。物を作って売るというビジネスから、一人一人のお客さんをより深く分析し、そのお客さんに合った提案をできるようなビジネスに変えていく。そのためにテクノロジーをどう使うかという話なんです。テクノロジーは手段でしかなく、根っこにあるのはビジネスモデルを転換することなんです。

 でもこれは非常にリスクが高い。今まで延々と築き上げてきた成功体験がある。これをデジタル時代に適したビジネスモデルに変えていくことは、口で言うのは簡単ですけど、社内にあつれきが生じるし、結果が分からないのに莫大な投資をしなくてはならない。そういう意味で経営者は今、非常に厳しい決断を迫られていると思いますね。

――やはり投資に逡巡したり、思い悩んだりする経営者は多いですか。

 多くいらっしゃるんじゃないでしょうか。

 そういうビジネスモデルの必要性は理屈では分かる。だからやってみましょうとなるが、でも成功するかどうか分からないから「初めは小規模で」となる。

 でも一つずつ確認しながら徐々に大きくしていこうよというのは、デジタルのビジネスではなかなかうまくいかない。