武田薬品 製薬エリートの真実#3

武田薬品工業の組織大変革の一環で、今春までに米ファンドに売却された武田コンシューマーヘルスケア(現アリナミン製薬)。これまでに人材が次々抜け、ロート製薬など大衆薬業界内外に散った。新会社となって約半年、「あの大物」も会社を去る。特集『武田薬品 製薬エリートの真実』(全8回)の#3はエリート流出の全容に迫る。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

分社化前後からこれまでに
100人近い「エリート」流出

「9月30日をもちまして××さんが退任することになりました」「対外発表は行いません」――。

 社内一斉メールを受け取ったアリナミン製薬社員は「やはりこの人も辞めるのか」と息をのんだ。

 長年、武田薬品工業の顔といわれた「アリナミン」を販売する大衆薬事業は分社化され、2017年に武田コンシューマーヘルスケアとして事業を開始した。同社は20年8月、米投資ファンドのブラックストーンへ約2400億円で売却が決定。21年3月末にアリナミン製薬と社名変更した。

 経営が落ち着かない会社からの人材流出は当たり前の流れではあるが、「分社化前後からこれまで、少なくとも100人近い人材流出があった」と、元武田コンシューマーヘルスケア社員は明かす。16年度末の従業員数は520人であり、なかなかの流出規模だ。

“ヤメタケダ大衆薬”と呼ばれるOB、OGの中で最高のサクセスストーリーは杉本雅史初代社長。「事業開始から1年を区切りとして」との弁で18年3月に突然退任し、翌19年にロート製薬社長に就任した。同じ頃にロート製薬にもう1人、武田薬品の本筋でキャリアを上り詰めた「超エリート」も転職し、要職に就いている。

 アリナミン製薬からも9月末、冒頭のメールで紹介されていた“ある大物”が去る。