財務次官が「バラマキ合戦」と与野党を批判、十字架背負う財務省の苦悩Photo:PIXTA

森友学園を巡る公文書改ざん問題で、財務省は「スティグマ=負の烙印」を未来永劫背負い続ける運命となった。その財務省の事務方トップである現役の財務事務次官が、実名で与野党の政策論争を「バラマキ合戦」と一刀両断した。十字架を背負う財務省の声は国民に届くのか。そして、「どの口が言うか」の批判を恐れず、政治家や国民に耳の痛い指摘をできる財務官僚は後に続くのか。(日本テレビ報道局経済部デスク 鈴木あづさ)

「財務次官のセクハラ騒動に
森友学園巡る公文書改ざん問題

 2018年3月からの2カ月間は激動だった。

「胸触っていい?」「抱きしめていい?」などの言葉を女性記者にかけたというセクハラ騒動で辞職に追い込まれた財務省の福田淳一元事務次官。当時、記者クラブの幹事社として各社のマイクを束ね、福田氏に代表で質問し続けた。

 福田氏とのやりとりはNHKなどで長々中継されたこともあり、「次官を追い詰める厳しい女性記者」として一時期注目されたが、その実、複雑な気持ちだった。女性記者が録音したやりとりを「自分の声なのかよく分からない」などと苦しすぎる言い訳を繰り返す福田氏を前に、「故郷のおっかさんが泣くぞ。白状して楽になっちまえ」と自白を迫る、情け深い老刑事の心境だったのである。

 麻生太郎財務大臣(当時)の失言癖については前回記事『さよなら麻生さん…番記者が見た戦後最長財務大臣、失言・官僚人気・政策』で触れたが、麻生氏はここでも失言。女性記者が名乗り出ない限り、セクハラの事実は証明できないとの認識を示し、「セクハラ被害者に名乗り出ろとは何事か!?」と炎上。さらに麻生氏が「財務省担当はみんな男にすればいい」などと発言したことで、野党6党が麻生氏の辞任を要求する事態に発展した。

 18年が「激動」となったもう一つの理由が、同年に発覚した森友学園への国有地売却を巡る決裁文書の改ざん問題だ。セクハラ問題は個人の問題として片付けることができたが、組織的関与が疑われたこの問題は、財務省への信頼を決定的に傷つけることになった。筆者も、公文書改ざんを指示したとされる佐川宣寿元理財局長に何度も質問をぶつけた。

殺気立つ財務省内の異様
幹部に記者が「あんたやったんでしょ!」

「事件は現場で起きてるんじゃない、会議室で起きてるんだ」という、年がバレそうなドラマのセリフさながら、財務省は「事件現場」となった。昼夜を問わず大小のカメラが廊下を走り回り、テレビ・新聞の経済部のみならず、社会部の記者が廊下の角に潜んで幹部のコメントを取ろうと狙う。

 佐川氏の指示を直接受けたとされる財務省幹部を追いかけ、「あんたやったんでしょ!」と叫ぶ記者まで出る始末。捜査1課も真っ青の犯人視報道だ。当時の財務省は、それくらい殺気立っていた。