年末商戦が好調な中、米国株価は持ち直し、債券市場では長期金利の上昇期待が高まっている。

 金融市場では、ブッシュ減税や財政管理法に基づく歳出自動削減に関して一時的な延長法案が可決され、財政の崖が回避されるとの見解が主流である。このまま堅調な消費が続けば、株高に連れて米国10年債利回りも上昇しよう。

 しかし、延長法案は一時的なもので、財政健全化に向けた本格的な議論は2013年前半に持ち越されると予想される。

 また、財政健全化に向けた与野党合意が相応の財政緊縮化を伴うものと予想されることから、米国の長期金利の上昇余地は大きくないと考えられる。

 ここ数年の米国実質GDPと、その7割を占める個人消費に注目すれば、好景気であったころの8割程度であり、一方、財政収支に注目すれば、09年度以降、4年連続で1兆ドル以上の赤字となっている。ブッシュ減税延長や社会保障税減税などが米国の財政赤字拡大を促す中、減税措置にもかかわらず個人消費が伸び悩んでいる。

 13年以降も各種減税策は継続されるべきだが、米国債の最上級格付けが失われつつあり、また、巨額の財政赤字が家計の信頼感を低下させていることを考えれば、財政健全化の必要性も高い。オバマ大統領は富裕層増税による財政健全化を公約に再選し、財政の崖に係る与野党対立の中でも一歩も引かない構えである。

 オバマ大統領が2期目であり、失うものがないことを考えれば、このまま富裕層増税を強引に推進すると予想される。13年前半には富裕層増税+歳出削減の組み合わせによる財政健全化策合意がなされる可能性が高い。

 中低所得者層においては依然バランスシート調整圧力が強い。過去、消費や貸家物件などへの住宅投資の多くを担ってきた富裕層への増税が決定すれば、13年以降の米国の消費や住宅投資には抑制圧力がかかる。