薄型テレビの単価下落に歯止めがかからない。調査会社BCNの速報値によれば、液晶テレビ全体の1月1~15日の平均単価が9万7228円まで下がり、このままいけば、月次で初めて10万円を割る可能性が出てきた。

 薄型テレビの平均単価は、年末商戦向けに新製品が投入されるために、11~12月は一定の水準で価格が安定するのが通例だ。だが、昨年はまったく様相が違う。12月は対前月比で単価が5%も下がり、今年1月は同10%も下がった。まさに底なしの状態である。

 価格が下がり続けている理由は明白だ。「積み上がった流通在庫を店頭でさばき続けている」(道越一郎・BCNアナリスト)からである。

 予兆は昨年の11月から現れていた。経済産業省がまとめた機械統計速報によれば、液晶テレビの11月末の在庫台数は、対前年同月比で65%も増加した。

 同月、メーカー各社は生産台数を前年並みまで絞っていたにもかかわらず、リーマンショック後の世界的な需要の低迷が日本市場にも波及した結果、在庫がふくらんだのだ。

 こんな状態で迎えた12月の年末商戦が、無事ですむはずがない。年末商戦向けに各社が投入した40インチ以上の大画面・高機能の新製品は、軒並み販売計画未達に追い込まれた。

  BCNによれば、新製品の平均画面サイズは、昨年の34.8インチから31.6インチに縮小しており、平均単価も16万4800円から12万8400円に下落している。大画面の拡販で単価アップを狙ったメーカーの思惑は完全にはずれた。

 一方、高機能の大画面テレビに変わって売れ筋を占めたのは、昨年3月以前に発売された安価な旧製品だった。その結果、12月の販売台数は約16%伸びたものの、単価下落が響き、金額では3%弱の前年割れという結果に終わった。

 「消費者が価格に対して敏感になっており、コストパフォーマンスを重視する傾向が強まっている」(大手メーカー幹部)。大画面化・高機能化で単価下落を抑え収益を確保してきたメーカー各社は今、戦略の転換を迫られている。欧米に続き、日本市場も、いよいよ消耗戦に突入する。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 前田 剛 )