 
    野口悠紀雄
第9回
      
      
      日銀が2013年4月に導入した異次元金融緩和は、日銀が市中銀行が保有する国債を最大60兆円購入して信用創造を図ろうとした。しかし市中銀行の貸付増加は不動産部門でしか確認されていない。この不動産の増加は消費増税前の住宅ローンの駆け込み需要であり、異次元緩和の効果とは言えない。
      
    
第8回
      
      
      資産価格と実体経済の遊離は、2013年に顕著に進んだ。2014年においても、資産価格と実体経済が乖離した動きを示すという点では変わらない。しかし、実体経済の停滞は、もはや無視しえないほどに拡大するだろう。すなわち、実質経済成長率はゼロあるいはマイナスになる可能性が高い。
      
    
第7回
      
      
      2014年も、日本経済は為替レートの動向によって大きく左右されるだろう。為替レートの動向を握るのは、国際的な投資資金の動きである。以下では、この数年間にいかなる動きがあったかを分析し、今後の動向を探る。
      
    
第6回
      
      
      日銀短観の全産業業況判断(DI)が改善し、景気が回復に向かっていると一般的には解釈されている。しかし、DI算出のメカニズムを見ていくと、そうはいえない面が多い。実質的には、景況感は為替レートの状態が大きく反映され、公共投資によって支えられているのである。
      
    
第5回
      
      
      円安は輸入価格を上昇させるので、これがどう負担されるかは大きな問題である。転嫁がどの程度なされたか、負担はどの程度増えたか等に関する定量的な把握が必要だ。円安による負担の増加率を業種別に細かく分析し、最終的に消費者への負担度合いを導く。
      
    
第4回
      
      
      12月9日に発表された2013年7-9月期のGDP(国内総生産)速報(2次速報値)では、実質GDPの対前期比増加率が、大きく下方修正された。日本経済に「好循環」は生じていないことが、はっきりと示された。
      
    
第3回
      
      
      為替レートや株価は、今年の春以降ほぼ膠着状態にあったが、11月中旬以降、円安が進み株価が上昇している。これは、新しいトレンドになるのだろうか? 以下では、為替レート変動の要因について考えることとしたい。
      
    
第2回
      
      
      金融緩和政策によって日本経済の状況が改善していると考えている人が多い。しかし、こうした見方は、データによって裏付けることはできない。消費税増税前の駆け込み需要と、従来型の公共事業拡大によって支えられているだけだ。
      
    
新連載 第1回
      
      
      GDP速報値の内容は、「経済の好循環が始まった」という政府日銀の説明とは大きく異なる。実質消費の伸びは、増税前の駆け込み需要と公共事業だけであり、アベノミクスが本格稼働した4月以降の成長率が2期連続して鈍化しているのである。
      
    
第29回
      
      
      上場企業の2013年9月中間決算は大幅な利益増となった。しかしこれをもって、日本経済が回復しているとは言えない。 統計データを精査してみると、利益増は円安によるものであり、雇用も増えておらず、生産はリーマンショック前と比べて大きく落ち込んだままであることがわかる。
      
    
第28回
      
      
      賃金の引き上げが重要な政策課題として論議されている。物価より賃金を上げることが重要だという当然のことが、やっと認識されるようになったことは歓迎している。しかし、そのための政府の方策は見当違いである。
      
    
第27回
      
      
      消費者物価が上昇の兆しを見せたとして、「デフレ脱却」というメディアの論調があるが、間違いだ。物価上昇は輸入物価の上昇、特にリーマンショック以降のエネルギーコストの上昇による影響が大きい。このことは、国民生活に何ら好影響を与えない。
      
    
第26回
      
      
      貿易統計の9月分と2013年度上半期(4~9月)分が発表された。普通であれば、円安は貿易黒字を増大させるはずだ。しかし、実際にはまったく逆のことが起こっているのである。今回は、この背景を分析することとしたい。
      
    
第25回
      
      
      日本経済が順調な成長過程に入ったとの意見が多い。法人企業統計を中心としたデータを見ることによって、そうした見方が裏付けられるかどうかを検討する。そして「景況感が回復しているのは大企業に偏っている」などの諸点を指摘する。
      
    
第24回
      
      
      安倍政権は「経済政策パッケージ」で、5兆円規模の補正予算案を編成することに加え、収益を賃金で従業員に還元する企業に税制で支援する「所得拡大促進税制」を拡充する案を表明した。その背景にある「賃金低下」の原因は何か。
      
    
第23回
      
      
      異次元緩和によってマネタリーベースは著しく増えたが、マネーストックはそれほど増えなかった。その意味で、異次元緩和は空回りしている。これは、貸出が増えないからだ。では、銀行の資産構成は、異次元緩和によってどう変化したのだろうか?
      
    
第22回
      
      
      マネタリーベースの増加にもかかわらず、マネーストックがあまり伸びていない。つまり、金融緩和政策は、期待どおりの機能を発揮していない。こうなる原因は、貸出が期待どおりに増えないからである。以下では、この状況を見ることとする。
      
    
第21回
      
      
      4月から開始された「異次元金融緩和政策」は効果を発揮しているのか。検証していくと、金融緩和による直接の結果として増えているはずの「マネーストック」が、実際には思うほど増えていないことがわかる。よって異次元金融緩和策は、「空回り」していると言わざるを得ない。
      
    
第20回
      
      
      4~6月期の国内総生産(GDP)第2次速報値は、実質で前期比0.9%増、年率換算で3.8%増となった。「金融緩和政策がいよいよ実体経済に影響を与え、経済の好循環が始まった」と感じている人が多い。しかし、実際に生じていることは、そうしたイメージとはまったく異なる。
      
    
第19回
      
      
      政府と日銀が進める「デフレ脱却=インフレ率の上昇が望ましい」という考えは、大いに疑問だ。物価上昇による実質消費の減少は、消費税の増税による影響に匹敵するほど大きいのだ。
      
    