日本銀行が2013年4月に導入した異次元金融緩和措置は、所期の効果を発揮して経済状況を改善しているのだろうか?
日本銀行は、異次元金融緩和において、市中銀行が保有している国債を購入することにより、マネタリーベースを年間60兆円程度増加させるとした。教科書的な説明によれば、マネタリーベースが拡大すると、それに数倍する規模でマネーストックが増大する。マネーストックの大部分は銀行預金であり、銀行預金の増加は、銀行貸出の増加によって引き起こされる(信用創造メカニズム)。
問題は、このとおりのことが生じているか否かだ。
これについては、この連載の第2回でも述べたのだが、マネーストックの12月の数字が公表されたので、最近時点までの状況を確認しておくのは意味あることだろう。
マネタリーベースは著しく増えた
マネタリーベースとマネーストックの対前年増加率および対前月増加額は、図表1と図表2に示すとおりである。
まず、日本銀行が直接に動かせる変数であるマネタリーベースを見ると、著しく増加した。
マネタリーベースの平残(平均残高)は、3月の134.7兆円から12月の193.5兆円まで58.7兆円増加した。増加率は43.6%だ。12月末残高は201兆8472億円で、異次元緩和措置で目標とされていた200兆円を上回った。
マネタリーベース平残の対前年同月比は、13年8月以降継続して40%を超えており、11月には52.5%という異常な高さとなった。図表1に見るように04年以降のマネタリーベース平残の対前年同月比は10%未満であり、包括的金融緩和政策が導入された10年においても20%程度になったに過ぎない。これと比較すると、異次元金融緩和措置後のマネタリーベースの増加がいかに著しいかがわかる。