竹田孝洋
米中摩擦でFRBが方針転換、市場は年内2回の利下げを織り込む
激化する米中貿易摩擦。パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は悪影響を懸念し、利下げへの金融政策変更をほのめかした。ただ、変更を好感し、株価が上昇したことでさらなる摩擦激化を招く可能性もある。

1~3月期GDPが景気動向指数と予想外の食い違い、景気の先行きは?
2019年1~3月期の実質GDPは前期比0.5%増と、大方の予想を上回り、景気動向指数で示された景気悪化の判断と食い違う結果となった。中国などアジアへの輸出減少の影響が大きい製造業の占める比率の差が結果の差の主因である。ただ、先行きは安心できない。米中摩擦のさらなる激化は輸出の落ち込みをもたらし、日本経済を景気後退に陥らせる公算が大きい。

米中関税戦争は消耗戦へ、中国国有企業への補助金めぐり溝
米国は中国からの輸入品2000億ドル分の関税を引き上げた。中国は直ちに報復として関税引き上げを発表、米国は中国からの残りの輸入品全ての関税引き上げも示唆し、関税戦争はエスカレートする一方である。ハイテク覇権を争う両国に歩み寄る余地は小さく、現時点で戦争が終結に向かうめどは立っていない。

米中貿易の25%関税、「全面対決」なら中国の成長率は1%低下する
トランプ大統領のツイートが市場を大きく動揺させた。延期していた対中関税引き上げの唐突な表明で、主要国の株価は大きく下落した。中国からの輸入品全額への25%関税も示唆している。関税での全面対決となった場合、最も深刻な影響を受けるのは中国だが、米国が受ける打撃も決して小さくない。

日本銀行が「少なくとも2020年春頃まで」と、超低利政策を維持する時期を明確化した。しかし市場は無視したかのように無反応。日銀自身の「手詰まり感」」を”明確”にしただけだった。

ブレグジット期限再延期でもむしろ高まる「合意なき離脱」の可能性
再延期の意味は目先の合意なき離脱をとりあえず回避したことだけにすぎません。結論をだせない英国議会の混迷状態に何ら変化はありません。合意なき離脱の可能性はむしろ高まっていくでしょう。

英国のEU(欧州連合)離脱をめぐり、追い込まれていたメイ首相がついに方針転換をした。それまで、かたくなになり、単一市場や関税同盟に残らないとしてきた離脱方針の修正に応じる姿勢を見せた。

第155回
気温がマイナス20度の状況で、外出する場合、通常の服装でもある程度の時間は耐えられるだろう。一方、マイナス20度の液体に漬かっていたら、あっという間に体温を奪われて耐えられないどころか命を落としてしまうだろう。

金融市場は景気減速を警戒、裏に米国の長短金利逆転
3月22日のニューヨークダウは、前日比460ドル安の2万5502ドルと急落し、それを受けて翌週25日の日経平均株価も、前営業日比650円安の2万0977円と大幅に下げた。この急落の裏には景気減速を警戒し、金融緩和を催促し始めた市場の姿がある。

FRBは大きくかじを切った。1月のFOMCで利上げを見送っただけではなく当面停止することを表明し、バランスシート縮小についても停止時期を検討していることを明らかにした。FRBの決定を受け、株価は上昇しているが、楽観し過ぎの面は否めない。

中国経済減速の底が見えない。1月21日に発表された中国の2018年のGDP(国内総生産)成長率は前年比6.6%と目標の6.5%前後は上回ったものの、28年ぶりの低水準にとどまった。

年初の株式・為替市場は大きく動揺した。米アップルの業績下方修正を契機に株価は急落、円高が進行した。FRBのパウエル議長が利上げ・金融正常化を急がない方針を示し、市場は落ち着いた。しかし、経済指標などを分析していくと、むしろ景気減速懸念が高まっていることが浮かんでくる。

株式の上昇相場は終わった。26日は、日経平均株価は反発、ニューヨークダウも年末商戦の好調が伝えられたこともあり、前日比1086ドル高と史上最大の上げ幅となった。しかし、当面、株価が再び上値を追って高値を更新することは望みにくい。それは株価を下落させた要因がしばらく改善する見込みがないからだ。

2019年の日本経済の見通しについて敏腕エコノミスト8人に聞いた。海外経済の減速がマイナスに作用するが、省力化中心に設備投資が拡大し、景気を支えるだろうとの予想が大半を占めた。

貿易戦争に絡む米国と中国のその場しのぎの妥協の危うさを、金融・資本市場は見抜いているようだ。
