物価や賃金の動向で年金の受取額は変わる。だから、マクロ経済スライドによる給付抑制も考慮されていない、ねんきん定期便に記載されている年金受取額をうのみにはできない。年金の真実の第4回では、経済前提が最も妥当な財政検証のケースVに基づいて、真の年金受取額を試算した。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
ねんきん定期便の受取額は実際に受け取る額とは違う
毎年、送付されるねんきん定期便に記載されている年金額は実際の受取額ではない。
50歳以上の方なら、今のまま60歳まで払い続けた場合に受け取ることができる年金額が記載されているが、それは現時点での算出基準に基づいたもの。
受け取り始めるまでの名目賃金上昇率や物価上昇率の変動、マクロ経済スライドによる給付抑制が反映されているわけではないのだ。
そこで、最も妥当なケースと考えられる財政検証のケースVの経済前提を基に、“本当にもらえる年金額”を試算した。
定額の保険料を納めて国民年金を受け取る自営業世帯を除いて、平均月収別に示している。平均月収額は、ボーナスを含めた平均年収を12で割ったものである。その水準に応じた年金保険料を支払うことを前提としている。
そして、現在の年齢別、共働き、専業主婦(夫)、単身など世帯類型別にシミュレーションした。自らの状況に最も近いパターンの試算を見ていただきたい。
試算結果は、将来の受取額を名目賃金上昇率で割り引いて、2019年の価格水準で示している。
物価上昇率で割り引いた価格を示せば、現時点と比べた購買力の増減を見ることができるが、将来の現役世代の平均的な暮らし向きとの比較が難しく、相対的に豊かなのか貧しいのかが実感できない。
そこで、名目賃金上昇率で割り引くことにより、将来時点での現役世代と比べた相対水準が分かる。マクロ経済スライドによる給付抑制のため、現在の年齢が低くなるにつれて、受取額が減少している。これは、その世代が年金を受け取る時点での現役世代との格差が、現時点より大きくなっていることを表す。