丸山健太
ここまで、中国経済のリスクとして、経済の構造問題を指摘してきた。だが、短期的に最も注意すべきは、経済的な要因ではない危機、すなわち国内政治における権力闘争や国際政治を舞台にした米中対立である。

中国では、少子高齢化が進んでいる。まず、少子化について、中国の出生数はおよそ30年間で半分以下に減少したことになる。少子化の背景には、1980年ごろに始まった「一人っ子政策」がある。次に、高齢化について見ると、65歳以上の高齢者人口は、所得水準の上昇などに伴い平均寿命が伸びたことにより増加が続く。

社会主義を掲げる中国では、もともと国有企業が経済の主役であったが、1978年に開始された市場開放政策「改革開放」をきっかけに、企業数、資産、利益などに占める国有企業の割合が長期にわたり低下、代わって民間企業が台頭するようになった。統計でさかのぼることのできる2001年以降を見ると、中国企業全体に占める国有企業の比率は顕著に低下しているが、こうした傾向は、改革開放以降、鮮明になったと推察される。

過剰生産に続く中国経済のリスクは「過剰債務問題」である。特に、企業が抱える債務と地方政府の債務が深刻である。企業の債務問題を見ると、中国企業は債務依存が強く、事業計画や収益力に基づかず安易に借入れを拡大させる傾向がある。特に一部の国有企業は、国有銀行からほとんど審査を経ずに巨額の融資を受け、雇用維持のために収益性の低い事業を継続しているとされる。

中国では、企業の過剰生産能力、すなわち企業が過剰な設備を保有していることが問題になっている。過剰設備の問題は中国に限ったことではない。経済が高成長にあると、企業は成長期待をもとに積極的な設備投資を行う。そのため景気が後退局面に転じると、企業の抱える設備は過剰になりやすい。

2020年の世界経済は新型コロナウイルス感染症の流行により大きく落ち込んだが、感染症の発生源となった中国は感染抑制にいち早く成功、早期の経済回復を実現した。一方、過剰生産能力、過剰債務・不良債権問題、「国進民退」、少子高齢化、所得格差など気になるリスクもある。
