政策が過剰設備を助長
中国では、企業の過剰生産能力、すなわち企業が過剰な設備を保有していることが問題になっている。
過剰設備の問題は中国に限ったことではない。経済が高成長にあると、企業は成長期待をもとに積極的な設備投資を行う。そのため景気が後退局面に転じると、企業の抱える設備は過剰になりやすい。もっとも、経済が再び成長ペースを回復すれば、企業の売上げも増加するため、過剰設備は時間の経過とともにいずれ解消される。
過剰設備が深刻な問題になるのは、大きなブームの中で過大な設備投資が長期間続いた後に、そのブームが崩壊する場合である。あるいは、高成長期から中成長期に、中成長期から低成長期に移行する局面でも問題になりやすい。日本ではバブル期に積極的な設備投資が行われ、バブル崩壊とともに低成長に移行した。そのため、設備が過剰となり、雇用、債務の過剰とともに「三つの過剰」として長期低迷の要因とされた。
中国は日米欧の主要国に比べて高い成長率を維持しているが、10%成長が続いていたころと比べると潜在的な成長力は低下している。そうした状況下で、従来のペースで設備投資を拡大させると、将来的に深刻な調整が不可避になる恐れがある。
中国特有の事情もある。リーマンショックを契機とした大型の景気対策や、コロナ禍でのインフラ投資拡大で鉄鋼などの生産が増加したことで、企業の過剰生産能力の調整が先送りされるばかりか、新たな過剰生産能力が生まれることになった。市場メカニズムが必ずしも効果的に働かない中国では、過剰生産能力を抱えた企業が政府の景気対策や補助金に頼るなどしており、あたかも政策が過剰設備を助長しているような側面もある。