6月の実質賃金はかなり高い伸び率を示した。
厚生労働省は名目賃金が上がったためとしているが、そうではなく、物価が下がったからである。資源価格下落や円高の影響が、ようやく実質賃金に影響し始めているのだ。
インフレ目標を放棄して実質賃金の上昇をさらに確実なものとし、それによって成長する戦略に転換することが必要だ。
実質賃金は上昇傾向に転じた
今年2月以来5ヵ月連続でプラス
厚生労働省が発表した6月の毎月勤労統計(確報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除く実質賃金は、前年同月比2.0%の上昇となった。増加率の大きさは、2010年7月以来5年11ヵ月ぶりだった。
厚労省は「ボーナスの増加が賃金上昇の要因になった」と説明している。
この説明自体は、誤りではない。しかし、6月の値がこのように高くなった原因は、昨年6月の実質賃金の対前年比が3%と落ち込んだことの反動である。この意味で、特殊要因によるものだ。
むしろ重要なのは、実質賃金の対前年増加率が、今年の2月以来、5ヵ月連続でプラスとなっていることだ。
実質賃金は、12年以降、ほぼ継続して減少してきた。これが実質消費を抑制し、経済成長率を抑制してきたのである。アベノミクスが、実体経済に影響与えることができなかった大きな原因は、この点に見出される。
したがって、実質賃金が上昇し始めたことは、日本経済にとって大変大きな意味を持つ。
以下では、なぜ実質賃金が上昇しているのかを分析し、それを今後の経済成長につなげるためには何が必要かを論じることとする。
実質賃金の上昇は、名目賃金上昇でなく
物価上昇率低下による
実質賃金の上昇は、名目賃金の上昇によってもたらされたという説明がなされることがある。この説明は正しいだろうか?