米国景気は成熟期
景気下振れへの警戒が強まる

 足元の労働生産性の伸びや企業の設備投資動向を見ると、米国景気は成熟期に入りつつある。今すぐではないにしても、向こう1~2年の間にはピークが徐々に意識される段階に進みつつある。

 2009年6月を景気の底(ボトム)に、米国では7年超の景気回復が進んでいる。背景には、低金利を追い風にした企業業績や個人消費や住宅市場の回復などがある。

 今後、景気回復の流れを一段と強くするためには、企業の設備投資が増加し、労働生産性が改善することが必要になる。それらの要件が整えば、企業の収益性は高まり、緩やかな賃金増加を通して景気回復のエンジンは一層出力を増すことになる。

 実際に二つの指標を確認すると、設備投資は4~6月期まで3四半期続けて減少している。労働生産性も同様だ。それに伴い、企業の収益も昨年7~9月期以降は減益傾向だ。雇用の改善が続いていることは確かだが、それが企業の業績を圧迫しかねないとの懸念も出始めている。

 今のところ、低金利のおかげで川下の消費が堅調なため、すぐに景気の腰が折れるとは考えづらい。しかし、永久に景気回復が続くわけではない。どこかでピークアウトを迎えることは避けられない。

 米国在住のエコノミスト連中とメールのやり取りをすると、「2017年に米国の景気がピークアウトする可能性は3割、2018年末までにピークアウトの可能性は7~8割程度」という見方が有力だ。

 過去3度にわたる量的緩和などの効果もあり、足元の米国の株式市場は堅調に推移し、史上最高値圏にある。一部の専門家の間では、「米国の株価は上がり過ぎ」との見方が台頭している。

 FRBとしては、景気下振れへの警戒が強まりつつある中で、低金利が株式のバブルを発生させるリスクを防ぎたいはずだ。そのため、市場の低金利観測に警鐘を鳴らし、過剰な株価上昇を抑えたいとの考えもあるだろう。

際限なきわが国の金融緩和策
懸念される「副作用」とリスク

 金利引き上げの可能性を仄めかすFRBに対して、わが国の金融政策は依然として際限のない緩和策に向かっている。少なくとも黒田総裁の発言を見る限り、日銀のスタンスに大きな変化は感じられない。

 7月の日銀決定会合では、市場参加者の期待とは裏腹にETF買入れ額の倍増を軸とする追加緩和が決定された。そして、9月の決定会合では物価および経済情勢、そして金融政策の効果に関して"総括的な検証"が行われる。

 黒田総裁のスタンスは、「わが国経済がデフレ脱却するためには何でもする。さらなる金融緩和に限界はない」というのが基本だ。

 そうした総裁の言動を見ると、9月の検証では、「マイナス金利政策には相応の効果がある」、「デフレから脱却できないのはエネルギー価格等の海外要因」、「さらなる金融緩和策の実施によってあくまでもデフレ脱却を目指す」、の3点が主な内容になる可能性が高いとみる。それは、金融市場の参加者に、際限なき金融緩和が進むとの思惑を与えることになるだろう。