なぜ離職が止まらないのか?
悩める企業経営者たち
せっかくコストをかけて採用したのだから、社員にはできるだけ長い期間残ってもらいたい。これは、どんな企業にとっても共通の願いだろう。しかし、慢性的な人手不足や人材の流動性が増したことにより、人材業界は売り手市場。人材の定着を図ろうとしても、なかなか成果が上がらない企業は多い。「働きやすい環境を整えているはずなのに、なぜ離職率が下がらないのか」と、経営者は頭を抱える。
そんななか、離職率を抑えることに成功している企業の取り組みを見てみると、人材定着においては、いかにして社員のニーズを吸い上げるかに重きが置かれているようだ。社員が望む働き方や人事システムはいかなるものか、その声を聞き出し、体制を整えることができれば、経営者が独りよがりで考える以上に社員にとって働きやすい環境ができ上がるはずだ。
社員の離職に歯止めをかけるための抜本的な改革に挑戦し、一定の成果を出している企業の事例に「働きやすい職場」のつくり方を学ぼう。
離職率を28%から3.8%に改善
社員が働き方を選ぶサイボウズ
まずは、グループウェアを開発・販売・運用するサイボウズ株式会社を紹介しよう。1997年の創業以来、同社の離職率は15~20%で推移していた。しかし、2005年に離職率は28%へと急激に悪化。その年の新入社員83名のうち、23人が1年以内に辞職してしまった。
もともと人材の移動が激しいIT業界においても、この状況は放置できない。しかし、社長の青野慶久氏には、会社のどこに問題があるのかがわからなかった。もともと自らを「ワーカホリック」と名乗る青野氏にとって、終電までの残業や土日出勤は当たり前のことだったのだ。