実は難しい、うつ病診断
正しい診断なくして薬は効かない

「うつ病ということで紹介を受け、診察してみると、別の病気であるケースはよくあります。逆に、別の精神疾患と診断されていた患者さんがうつ病であることも少なくない」

 精神医学界の重鎮で、うつ病治療に精通するK医師は「大きな声では言えないが」と断りつつ、そう話してくれた。

 代表的な9つの抑うつ症状があって、一定の期間見られた場合に、うつ病、正式には「大うつ病」と診断する……という診断基準はあるものの、実際は、経験豊富な精神科医でなければ、この病気の真実を見極めるのは難しいらしい。

「最近問題となっているのは発達障害です。精神的な発達が不十分なまま成人し、職場に配属される。そこでいろいろな軋轢が生じて、抑うつ状態になっている人がいます。そういう人も、診断基準ではうつ病になりますが、解決すべき問題は発達障害。発達障害を診断できなければ、うつ病治療だけをしても治せません」

 治療を続けても治らなければ絶望し、自殺を選ぶケースは増えるだろう。

「高齢者の認知症も初期はうつ病のようになりますし、脳腫瘍や甲状腺ホルモンの内分泌系の病気でもうつ病の症状が出てきます。うつ病の鑑別はすごく難しい。うつ病は不定愁訴から始まるため、最初に精神科に行く人は少なく、内科、婦人科、脳外科などを受診する方がほとんどです。目下、そこの先生方にうつ病の勉強をしていただき、疑わしい患者さんは精神科へご紹介いただくようなネットワークづくりに取り組んでいます」

 正しい診断なくしては、薬は効かないし、場合によっては症状を悪化させることもある。認知行動療法等の治療も、正しい診断あってこそ、効果が期待できるのだ。

 しかし、うつ病患者には、自分の診断が間違っているのではないかと、医師に問いただす気力はない。家族もそうだ。いくら「心の風邪」というフワッとした表現に変わったとしても、身内の「うつ病」は、依然公言しがたい雰囲気があり、アクションを起こしにくい。

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痛くない日本独自の鍼灸

 そんな中、うつ病の新しい治療法として注目されているのが、鍼を刺さない(刺すとしても3ミリ程度)、痛くない、日本独自の鍼灸だ。

 鍼を刺さずに、身体の表面を金属の棒状の鍼でなでて治療する方法は「てい鍼術」と呼ばれる。