これら、痛くない鍼灸を駆使して「ココロのケア」に取り組む鍼灸師・船水隆広さんは2013年、ハワイの医療系大学院に招かれ、「ココロの病と鍼灸」というタイトルで講演を行った。

海外講演にて。実演中の船水さん(中央)

 アメリカは国を挙げて有効性の立証に取り組むなど、代替医療と西洋医療の併用に積極的だ。ある調査では、50歳以上のアメリカ人の3分の2以上が、マッサージやサプリメ ントなど何らかの代替療法を利用しているというデータもある。

 また、アメリカ人は湾岸戦争等の戦争体験からPTSD※になっている人が非常に多い。

 普通、鍼灸といえば、治療したい症状に応じて「ツボ」と呼ばれる部位に、専用の鍼を刺していく。耐えられないほどの痛みではないが、やはり痛いし、数ヵ所に血が滲むのは当たり前。気が弱い人や、「注射が苦手」な人にとっては、相当ハードルが高い。

 まして、うつ病で気持ちが弱っている人は健常者以上に痛みに弱いし、アメリカ人は、日本人以上に痛みを伴う治療法を受け入れないという。

 ゆえにアメリカでは、「痛くない鍼灸」への関心が高く、うつ病の治療に取り入れる土壌が整っていたため、船水さんの講演には退役軍人、現役軍人、医師、研究者や講師、大学院生など大勢の専門家が集まったと考えられる。

 日本でも、痛くない鍼灸によるうつ病ケアを普及させるべきではないだろうか。

※PTSDとは
 PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)は、強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、心のダメージとなって、時間がたってからも、その経験に対して強い恐怖を感じるもの。震災などの自然災害、火事、事故、暴力や犯罪被害などが原因になるといわれている。(厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」より

うつ病の身体症状を見抜く
早期発見の窓口としても有効

 鍼灸には、早期発見の窓口としての役割も期待できる。

 なぜなら、うつ病によって体に現れる最もポピュラーな症状は、睡眠障害、疲労感、倦怠感、首や肩のこり、頭痛だが、これらの症状はいずれも、鍼灸治療の得意領域だからである。