中国最大のパソコン(PC)メーカーであり、世界第4位のシェアを持つレノボ・グループは、中国で最もグローバル化の進んだ企業である。2008年のリーマンショック後、3四半期連続で最終赤字にあえいでいたが、見事復活を遂げた。その立役者・楊元慶CEOが、復活までの道のりと今後の成長戦略を語る。

赤字転落の緊急事態
5年ぶりにCEO復帰

楊元慶(Yang Yuanqing)
聯想集団(Lenovo Group)CEO
Photo by Toshiaki Usami

 リーマンショックで世界経済が大混乱に陥っていた2008年暮れ、中国最大のPCメーカー、レノボ・グループの社内は重苦しい雰囲気に包まれていた。

 世界同時不況に直面した大企業が軒並みIT投資を抑制・凍結した結果、PCの需要が激減。競合他社と比べて企業向けの売上高比率が8割弱と非常に高かったレノボは、一気に苦境に陥った。08年10~12月期の売上高は36億ドルと前年比で20%も減少し、9700万ドルの最終赤字に転落した。続く09年1~3月期は、さらに業績が悪化し、売上高は前年比26%減の28億ドル、最終赤字は2.6億ドル超まで広がっていた。

 「経営数値もかなり悪化していたが、最も深刻だったのは、社員が自信をなくしてしまっていたこと。誰もが会社の将来が見えず不安を抱いていた」

 危機感を募らせた当時会長の楊元慶と、レノボの創業者にしてレジェンド・ホールディングス(レノボの持ち株会社)会長の柳伝志は、共に立て直しの陣頭指揮を執るべく、09年2月、5年ぶりに楊がCEOに、柳が会長に復帰した。かつてレノボをグローバル企業へと導いてきた「最強のタッグチーム」が復活したのだ。

 「私たちの使命は明白だった。まず一刻も早く黒字化すること、そして新たな長期的成長戦略を立案し実行することだった」

 楊には、レノボが抱える問題点がはっきりと見えていた。「業績の落ち込みは、リーマンショックという外的要因もあるが、企業向け市場に依存してきた事業戦略にも問題があった。世界不況の影響をあまり受けなかったコンシューマー市場を、もっと早く開拓しておくべきだった」。

 CEOに復帰した楊がまず着手したのが、不透明になっていた会社の進むべき道を指し示すことだった。それが「Protect&Attack」と名づけた戦略だ。