
最先端半導体の量産を目指すラピダスの公的支援額が累計1兆7000億円規模に膨れ上がった。半導体AI産業への支援を加速させているのが、政府が掲げる「2030年度までに10兆円以上の公的支援」の方針だ。特集『絶頂か崩壊か 半導体AIバブル』の#5では、政府主導の巨額支援の裏側にいるキーパーソン「政官財30人」を一挙に明らかにする。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
財務省と経産省が水面下で合意
「10兆円の半導体AI公的支援」の舞台裏
「毎年こんな争いをするわけにいかないでしょう」
2023年暮れ、東京・霞が関。財務省の宇波弘貴・大臣官房長(当時)は、経済産業省の野原諭・商務情報政策局長と向き合って、両省の間に抱えていた大きな課題を解消することで意見が一致した。
財務省と経産省の間の溝は大きかった。その年の夏から本格化した23年度補正予算の折衝で、経産省は半導体の支援に計3.4兆円もの予算を要求。半導体予算は年々膨れ上がる中、22年度補正の1.3兆円すら大きく上回るという異次元の規模だった。
もはや財務省にとっては到底受け入れられる規模ではない。自民党の有力政治家をバックに要求の圧力を強めてくる経産省との応酬の結果、23年度補正の半導体支援予算は1.9兆円で決着した。
野原氏が宇波氏の元を訪れたのは、その手打ちの意味があったのだ。実は、これが、政府が半導体AI分野に「30年度までに10兆円以上」を支援する方針が決まったきっかけだった。
両者はどう折り合いをつけたのか。財務省と経産省が“和解”したことで、どのように政府の大方針がまとまったのか。次ページで明らかにしていく。
また、これにより半導体AI関連の支援予算は30年度に向けて加速度的に積み上がる見通しになった。果たして、かつてない規模へと巨大化する「半導体AI国家プロジェクト」を動かしているのは誰なのか。巨大な公的資金を取り巻く「政官財30人」のキーパーソンの実名を一挙に公開する。