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政府も積極活用する
オープンソースプログラムの現実

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第407回】 2016年9月26日
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ギットハブのオープンソース部門チーフであるブランダン・キーパー氏

 同社オープンソース部門のチーフであるブランダン・キーパー氏によると、企業がオープンソースを利用する場合は、プログラムコードだけでなく、法律、IP(知財)、ビジネス戦略などに通じた担当者がいる。そうした視点から、オープンソースコードを評価した上で利用する。量販店のウォルマートは、クラウドのインフラストラクチャー構築を、オープンソースの利用で加速化したという。デパートチェーンの「ターゲット」もユーザー企業だ。

 同氏によると、これまでのオープンソースソフトウェア開発はデータベース、ライブラリーなどネットワークのインフラに関わるものが多かったが、現在はよりイノベイティブなプロジェクトが進められるようになっている。好例は、グーグルのテンサーフローやフェイスブックの360度カメラのデザインと画像スティッチのコード、そしてテキストエディターのアトムなど。フィールド・トラック製造大手のジョン・ディアは、ギットハブ上で自走トラックのソフトウェアを開発中だ。

いち早くオープンソース化した
イギリス政府

 各国政府もオープンソースを利用しており、ギットハブのユーザーでもある。

 ホワイトハウスは今春、オープンソース化のイニシャティブを発表し、そのパブリックコメント中にギットハブを利用した。その結果、各政府機関は最低20%のコードをオープンソース化するという政策を施行した。今秋から「code.gov」というサイトも開設する計画だ。

 ホワイトハウスCIOオフィスの上級テクノロジーアドバイザー、アルバンド・ソレヒ氏によると、政府がオープンソース化を進める理由は二つあるという。ひとつは、機関間のコードの重複による無駄をなくして、再利用を推進すること。もうひとつは、政府がカスタマイズしたコードを広く使って欲しいからだ。

 ところで、一足早くオープンソース化を進めていたのは、イギリス政府である。イギリス政府デジタル・ガバメント・サービス(DGS)のテクニカル・アーキテクチャー担当ディレクター、ジェイムス・スチュアート氏によると、政府のデジタル戦略の策定と共に、DGSが創設されたのは2011年。当初、寄せ集めの14人のスタッフで始まったDGSは、開発をアジャイルに進めることを目標のひとつとして掲げているが、2012年にはデータをオープン化した。それは許可も取らずに始めたことだというが、現在も「何も言われていない」という。現在、スタッフ数は短期契約者も含めて600人に拡大した。

 DGSからは、パスポートのオンライン申請などのしくみが生まれ、その中のいくつかは他国の政府や地方政府にも利用されているという。

 ギットハブは、2008年に3人の起業家によって創設された。名称にある「ギット(Git)」とは、ソフトウェアのバージョンをコントロールするシステムのこと。これ自体が、オープンソースソフトウェアのリナックス創始者として知られるライナス・トーバルスによって最初に開発された。ギットハブはギットを核にして、コメントを付けたり、貢献の履歴を一覧できるしくみなど、オープンソースソフトウェア開発に便利なツールを数々揃えている。

 同社は、最初の4年間は外部からの投資なしで運営してきた。その後、ベンチャーキャピタル大手のアンドリーセン・ホロウィッツやセコイヤ・キャピタルから総額350万ドルの資金を調達。オープンソースソフトウェアを支えながら、企業評価額が20億ドルにも達するという、ユニークなビジネスモデルを持つ注目スタートアップである。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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