部下の誤った行動はわざとではない
相手の行動を評価したり、相手に行動を強制するメッセージ、これを「他者評価メッセージ」と言いました。これに対して、自分の素直な気持ちを伝えるメッセージを「自己開示メッセージ(セルフディスクロージャー)」と言います。
前回に引き続き、昼休みにレポート作成に追われる上司であるあなたが、談笑をしている部下の会話に気をとられ、苛立っている状況を想定してみます。
まず考えていただきたいのですが、レポートを書いているあなたと、隣の席で談笑している部下、このとき、困っているのはどちらでしょうか?
答えは簡単です。レポートを書くことに集中できないあなたです。ですから、本来あなたが主張すべきは、その「困っているという状況」なのです。
自己開示メッセージの基本は、「私が困っているのだから、その困っている状況を、『私』を主語にして伝えていこう」ということです。
私たちは、不満に感じる出来事が起こると、その出来事をもたらした相手の行動が悪いのだと決めつけ、それを修正しようとします。そのときの言い方は、相手を主語にしたメッセージになります。これは相手の行動を評価し、時としてとがめる言い方になってしまいます。たとえば「(おまえは)うるさいんだよ、静かにしろ!」のように。
しかし、相手はあなたを困らせようとして談笑しているのではなく、相手にとってはごく当たり前の行動をしているに過ぎないのです。これは、人間関係を良好に保つうえで、とても重要な認識です。
ですから、困った状況が発生したら、その困っている状況を素直に伝えるべきです。
たとえば次のような具合です。
「(私は)実は、1時までに仕上げないといけないレポートを書いているんだけど、君たちの話が耳に入ってしまい、どうも文章に集中できなくて困っているんだ」
これが自己開示メッセージです。