売上高では業界最大手ながら、利益では7年間、商船三井に負け続けてきた。ところがここにきて、安定志向・総合化の戦略がようやく花開こうとしている。
2008年のリーマンショック以降、大赤字に沈んだ日本の海運業界。今期に入って業績は急速に回復し、このほど発表された10年度中間決算では、日本郵船、商船三井、そして川崎汽船の3社共が業績を上方修正した。
この数年、大赤字で3社の足を引っ張り続けたコンテナ船(定期船)事業の需給がようやく回復してきたからだ。
しかし、日本郵船社内には業績回復の喜びにわく雰囲気はなく、7年越しの逆転劇を虎視眈々(たんたん)と狙っている。積年のライバル、商船三井との利益金額レースだ。
09年度の売上高は1兆7000億円。1兆3500億円の商船三井に比べて規模は1.2倍以上もあるにもかかわらず、図(1)にあるように03年度から7年間ものあいだ、経常利益では負け続けてきた。
なぜこのような差が出てしまったのか。両社の戦略の違いをひと言でいえば、「長期契約で安定路線を狙ってきた日本郵船と、運賃市況上昇の波に乗って船を仕込み、利益を上げてきた商船三井」ということになる。
図(2)をご覧いただきたい。不定期船の運賃指数「BDI」の推移を示したものだ。03年頃から急上昇し、乱高下を繰り返してきたことがわかる。
商船三井は03年までの市況低迷時に低価格でケープサイズ(大型)の、ばら積み貨物船を大量に注文。船のおよそ2割をフリーポーション、つまり荷主との長期契約はせず、市況運賃で運航してきた。その後、中国の鉄鉱石需要が急上昇したために市況も爆発的に上がり、大儲けすることに成功したのだ。
一方、日本郵船のフリーポーションはおよそ1割。荷主との長期契約を重視している。フリーポーションが多ければ市況暴落時には大損をする羽目になるが、長期契約主体なら安定した利益を得ることができる。その代わり、市況が高騰しても、大儲けすることはできない。