「でも、品評会で評価されるのは目的じゃないんです。なんでこんな過酷な状況でものをつくって、誰に食べてほしいの? ってなったら、やっぱり自分たちは日本の方に味わってもらいたい。日本人が好きなのは和の文化。だから、自分たちは和食にあうオリーブオイルを目指しています。オリーブはそれぞれの国の風土から育まれるので、それぞれの国にあった料理があり、使い方があると思うんですよ」

──なるほど、安価なオリーブが大量に手に入るスペインではオイル煮のアヒージョという具合ですね。

今年度のオリーブは年明けには販売できるそう

「そうです。ですから日本のオリーブオイルは『和の味』を提案しなくてはいけないと思うんです。小豆島のオイルは正直、高価です。でも『これでもか』っていうくらいこだわっているんです。仕上げに、ほんの少しかけるだけで香りがぶわって出ます。大事なのは使い方だと思います。最近は和と和のコラボレーションっていうか、オリーブオイルにちょっと醤油を足して、だし醤油を足して、と提案しています。これ、めっちゃ旨いんです」

 外国のオリーブオイルと醤油を組み合わせると「なぜか喧嘩してしまう」と佐藤さんは言う。でも、同じ風土から生まれた食材同士ならぴったりとあうのだ。たしかに国産のオリーブオイルは穏やかな味で、どの外国の味とも違う。小豆島のオリーブオイルは百年の歴史を経て、日本の味になったのだ。

「『あそこ面白えな』って思ってもらえたらいいんすよね。ずっと走っているんですけど、ゴールはどこなのかって聞かれると、答えるのは難しいです。ぶっ倒れるまで、ですよね。でも、自分がここまで来たのも同年代の仲間がいたからだと思う。全員がみんな全力疾走しているというか」

 ぶっ倒れるまでという答えからもまた、サムライの姿勢を感じた。侍=武士の心得を説いた『葉隠』は「死ぬことと見つけたり」という言葉で知られる。この言葉の真意は死を美学として扱っているのではなく、死を意識することで使命を果たせる、ということだ。己の生死にかかわらず、正しい決断をしなければならない、ということだ。

 『葉隠』にはこんな一節もある。

「今の世を、百年も以前のよき風に成したくても成らざることなり。されば、その時代時代にて、よき様にするが肝要なり」

 彼らは今年も新しいオリーブの木を植える。100年前の人たちと同じように。100年先の人たちに誇れるように。

(葉隠からの引用は三島由紀夫『葉隠入門』によった)