村上 共通の敵が外にいたり、達成困難な高い目標があれば、自然と団結するんじゃないかと思います。ライバル同士であっても、たとえチームの中で仲がいい悪いがあったりしても、チームを背負ったら団結する。卓球の監督をやっていると、人間とはそういうものだと強く感じます。

――無理に仲の良いチームをつくろうとする必要はない、と?

村上 僕は、そう思っています。ほかのチームスポーツであるように、チームを仲良くするために焼肉屋につれていくとか、そういうことはないですね。僕が焼肉食べたいときに、ついでに連れていくことはありますけど(笑)。そういうものでチームワークはできないと思っています。

 ……いや、もしかしたら、男同士の場合は、それがチームワークにつながるのかもしれない。男は、飲めば本音を話しますから。お互いに本音を話し合って、「よし、明日も頑張ろうぜ」となるかもしれませんね。

 だけど、女性はお酒飲んでも本音を話さないもん(笑)。それに今回の場合、伊藤美誠は15歳でお酒飲めないし、福原も一滴もお酒飲めないし。だから、飲みュニケーション的なものは一切していません。

 でも、たぶん、男同士でも、チームワークの本質って、そういうところにはないと思いますね。特に、プロフェショナルの集団では。皆さんも、そうじゃないですか?(笑)

――では、監督の役割とは?

村上 高い目標を掲げて、それを達成する戦略を明示することに尽きると思っています。僕の場合ならば、「銀メダル以上」という目標を設定し、「第2シードを取る」という戦略を立てるというのが大きなフレームです。

 それを、どんどん細分化していくわけです。たとえば、一試合ごとに、「勝つためのオーダーを決める」というのも戦略ですよね。これを明確に示すことこそが、チームワークを生み出す起爆剤になると思うんです。

「勝つためのオーダー」とは、先ほども述べたような「役割分担」です。石川がシングルで2つ勝って、ダブルスで1つ取るという役割分担。この場合、福原と伊藤もシングルに1戦ずつ出るわけですが、極端に言えば、そこで負けてもいい。というより、僕は監督として、相手のエースに福原か伊藤を当てようと考える。はっきり言うと「負け役」です。これは、石川で絶対に2つ取るために必要な戦略なんです。

 そのかわり、ダブルスでは福原と伊藤に絶対に勝ってもらう。こういうメッセージを明確に発することで、各人の役割をはっきりさせることが重要だと思います。

 これは、監督である僕の「意図」です。直接、「君が負け役だ」とは言わないですよ(笑)。ただ、オーダーには僕の意図が表現されます。オーダーを聞いたら「あ、この試合は自分が勝つ役割なんだ」「このオーダーは、ダブルスをとりにいってるんだな」と、選手たちは読み取ってくれます。そして、団体戦として戦うときには「負け役」「勝ち役」があって、役割分担して、3試合をどうとるかをみんなで考えることが、チームワークを生み出すのだと思います。

 だから、監督の役割は、勝つための戦略を明確に立てて、毅然と示すこと。戦略が誤っていれば、責任をとる覚悟でやることじゃないでしょうか。そして、その戦略に基づいて、選手にそれぞれの役割を認識させる。それが徹底できれば、自然とチームワークはついてくると考えています。

――なるほど。これは、企業におけるリーダーシップやマネジメントにもとても参考になるお話ですね。

村上 あと、もうひとつお伝えしたいことがあります。実は、もうひとり、今回の銅メダルの貢献者がいるんです。補欠選手だった平野美宇です。彼女は五輪期間中、ずーっと選手たちの練習相手になってくれました。

 それと、いつも伊藤美誠の話し相手でね。同級生だから、何でも話せる。伊藤も平野がいなかったら大変だったんじゃないかな(笑)。試合が終わった途端に、伊藤が平野に「これ見て見てー」とか言いながら、ネットで見つけた何かを見せたりしてワイワイやっている。何しゃべってるのかわからないですけど(笑)。平野は平野で、自分の役割をしっかり果たしてくれましたね。彼女も大貢献者ですよ。

※第2回『世界一だった日本卓球が長期低迷に陥った理由』に続く。