今年創業100周年を迎えた日立製作所。同社の4~9月期(上期)の連結決算は、最終損益が1580億円の黒字(前年同期は1332億円の赤字)転換を果たした。赤字からの急速に脱出した要因としては、構造改革でコストを削減したほかに、アジアを中心に新興国市場の開拓が功を奏したことが挙げられる。同社の海外売上高比率は、前年同期より3ポイント増の44%にまで高まった。

日立はとりわけ中国市場には、人的経営資源を重点的に投入している。エレベーター、建機、各種の装置などの社会インフラを熟知する経営者のほかに、昨年来、IT営業の専門家やエコシティを担当してきた、日立屈指の営業人材を集中的に中国に派遣している。

新興国では都市人口の増加にともなって、社会インフラに対する需要が非常に強い。社会インフラにITを取り入れて、その「融合」を進める日立は、新興国での新しい市場の匂いを、ほかの総合電機メーカーより先に嗅ぎだし、行動に移している。

日立製作所スマートシティ事業統括本部担当本部長の野本正明氏は、2010年10月に日立(中国)有限公司常務副総経理に任命され、さっそく天津エコシティのプロジェクトを取り組んでいる。

日立がどのように次の中国市場戦略を描いているのか、日立の取り組みと中国で実際に行うプロジェクト、ハードルなどについて聞いた。
(聞き手/在北京ジャーナリスト 陳 言)

スピード感が求められる
社会インフラの大市場

――今年4月1日に日立では社長直轄の「スマートシティ事業統括本部」が出来たばかりですが、担当本部長の野本さんは、今は中国にいらっしゃるのですね。

 そうですよ。4月1日に統括本部が設置され、同時に中国天津エコシティのプロジェクトも本格的に始動したので、その時からほぼ毎月中国へ出張しました。