05年、早稲田は日本の大学として初めて北京大学内に大学事務所を設立した。同じ年に北京大学、復旦大学などの有名大学と提携してダブルディグリー制度(所属大学だけでなく、提携先の海外の大学の学位も同時に取得できる教育プログラムで、留学しても卒業が遅れないなどのメリットがある)を設けた。

 また、中国の高校との「指定校制度」を設置し、中国各地の高校から早稲田に留学したい学生を推薦してもらう仕組みを整えた。日本語ができる必要はなく、TOEFLと小論文、英語面接などによって合格を決めるもので、2016年5月までにその数は25校に上っている。早稲田には英語だけで学位が取れるコースが学部、大学院合わせて50コースもあり、「これが日本への留学を希望する高校生にとって大きな魅力になっている」(江氏)のだ。

 日本への留学というと、当然、日本語という言語のハードルが立ちはだかっており、通常、日本語ができなければ日本の大学には入れないが、早稲田は日本語という“縛り”をなくし、受験者のハンディキャップをなくしたことで、より優秀な中国人留学生の確保を実現した。

人口減に危機感を持っていた早稲田
10年以上かけて取り組んできた留学生戦略

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 早稲田がここまで留学生の確保に精力を注ぐのには、18歳人口の減少という社会問題があるからだ。大学に入学する18歳人口は09年以降横バイだったが、18年度からは再び減少期に入ることが予想されており、2024年度には106万人、2031年度には100万人を割るという悲観的な数字が出ている。16年度、入学者が定員を下回った私立大学は全体の44.5%になったことから、今後数年以内に経営破たんする大学が続出するだろうといわれている。

 私学の雄、早稲田大学といえども、人口減少の波にはあらがえず、強い危機感を感じている。早稲田でも受験者数は年々減少しており、このままでは高い偏差値を維持できなくなるからだ。

 だからこそ、早稲田は「10年以上の歳月をかけて着々と留学生戦略をとってきた」(江氏)のであり、今後も「中国人を始め、積極的に留学生を誘致していきたい」(同)と意気込んでいる。早稲田は2032年に創立150周年を迎えるが、今後、教育の質の向上のため、学部生を減らし、大学院生を増加させること、学生の5人に1人を留学生にすること、などを明確なビジョンとして掲げている。

 こうした早稲田の戦略や歴史的な関係が宣伝効果を発揮し、今のところ、中国で早稲田といえば「日本で行きたい憧れの大学」として一目置かれている。

 だが、今後はどうだろうか?中国人留学生獲得では、東大と並びダントツのツートップを走り続けるのか? あるいは慶應や上智、青山学院など他大学が追い上げてくるのか? 少子化の一途を辿る日本全国の大学にとって他人事ではない問題といえそうだ。