財源確保と人手不足問題をどうするか?

 3年に一度の改訂期を再来年に迎える介護保険制度。厚労省の社会保障審議会・介護保険部会がほぼ隔週ごとに開かれ、急ピッチで委員の意見表明が成されている。2000年4月に制度が始まって以来の大幅な見直しとなると言われるが、どのような雲行きなのか。現状を点検した。

 団塊世代が70歳代後半になる7~8年後には要介護者の増大が見込まれる中、財源と介護者の絶対的な不足は明らか。危機的状況を迎えるという。

 そこで、厚労省が打ち出したのが、新たな負担増と介護サービスの縮減による財源確保策である。加えて、国として着手し始めたのが外国人を呼び込む人員確保策である。

 介護保険部会には様々な厚労省案が次々提案され、医療や介護、医療保険団体、自治体、経済団体、大学教授など多くの業界団体などを代表する35人の委員が厚労省案に諾否を述べている。一般的には、賛成論者が多ければ、改定案に盛り込まれることになる。

 介護サービスの縮減などによる財源確保策は、(1)要支援者の訪問介護と通所介護(デイサービス)の自治体への移行(既に実施中)、(2)要介護1、2の軽度者向け訪問介護のうちの生活援助サービスの自治体への移行、(3)ケアプラン作成費の利用者負担、(4)保険料の2割負担の拡大、(5)高額介護サービス費の基準引き上げ、(6)2号被保険者の負担法に総報酬割りを導入――などがある。

 人手不足の解消策としては、A外国人技能実習生の導入、B外国人の訪問介護を解禁、C要支援者向けの訪問介護と通所介護の自治体への移行による地域住民への依存――などが挙げられている。

 これらの新提案のうち、最も注目されたのが(2)の要介護1と要介護2の高齢者向けの生活援助サービスであった。ヘルパーが自宅などに訪問して、掃除や洗濯、買い物、調理など日常生活を手助けする。資格を持つ専門職が全国一律に行っている現行制度を市町村の自治体に移し、ボランティアなど地域住民主体のサービスに転換させようというものだ。これにより、人件費が大幅に削減できるという。

 介護保険部会では対立する激しい議論が続いた。日本経済団体連合会や日本商工会議所の委員からは「専門職はもっと技能を有する排泄介助や入浴介助、看取りなどに特化していくべきで、日常生活を援助するのは自治体事業としてもいいのではないか」とする賛成論が出た。

 なかには「このサービスが家事代行的に使われているのは問題。自分で動くことができるのにヘルパーに肩代わりさせていると、身体機能の悪化につながりかねない」と、サービスそのものを否定しかねない意見も出された。