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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

「Cyber3 Conference」第2回が東京で開催
日本がリーダーシップをとる絶好のチャンスに!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第25回】 2016年10月31日
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 こうしたなか、もし悪意のある第三者がハッキングで重要なデータを書き換えたりしたら…。電気や水道のインフラを突然ストップさせたり、自動車を暴走させたり、心臓ペースメーカーを誤作動させたりすることもできてしまいます。インターネットの世界がセキュア(安全)でなかったら、便利と思われていたIT技術は、たちまち人間の財産や生命にとって大きな脅威となるでしょう。

 つまり、これからの人類の発展は、インターネットを安全・安心に使うための技術、すなわちサイバーセキュリティなくしてはあり得ない、と言っても過言ではないのです。

サイバーセキュリティは
ネット社会と経済成長を加速させる

 サイバーセキュリティにかける費用は「ネガティブなコスト」と考えられがちですが、それは誤りです。この連載で何度も書いたとおり、自動車産業の発展にはブレーキ性能の向上が不可欠でした。安全に止まることが確約されなければ、高速交通網の整備もできなかったわけです。同様に、サイバーセキュリティの確立がなければインターネット社会の発展もあり得ません。

 そもそもインターネットの基礎となるコンピュータ端末間の通信技術は1969年にすでに誕生していました。しかし、インターネットが広く普及するためには、通信を暗号化する技術であるSSLやRSAなどのセキュリティ技術が登場する1990年代を待つ必要があったのです。

 サイバーセキュリティは決して足かせなどでなく、これこそがインターネット社会と経済成長を加速させる、唯一無二の重要な役割を担っているということを理解しておくべきです。

今のインターネットは
黎明期の自動車と同じで未成熟

 米国国務省の調査では、オンラインに不安を感じ、使用を控えている米国人の割合は2016年夏の時点で45%にも上るそうです。この状態は黎明期の自動車に似ています。

 人類初の自動車は、1769年にフランス軍人のキュニョーが開発した蒸気で動く砲車とされています。時速はわずか3キロ。そんなノロノロであるにもかかわらず、試運転中にパリ市内で史上初の自動車事故を起こしてしまいました。当時の人々は「あんな危ないものに誰が乗るのか」「手入れが大変そう」「怖い」「馬車のほうが便利だ」とあざ笑ったとか。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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