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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

「Cyber3 Conference」第2回が東京で開催
日本がリーダーシップをとる絶好のチャンスに!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第25回】 2016年10月31日
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 ですが、その後の展開は誰もがご存知の通り。自動車産業は猛スピードで発展していき、あらゆる産業のビジネスシーンにもたらした恩恵は計り知れません。今や「自動車を捨てて馬車に戻そう」と主張する人はいないでしょう。かつて人々が自動車を恐れたのは、その製造技術も乗りこなす技術も未熟だったからです。

 これまでのインターネットもまた、未熟な技術で、未熟な使い方をしてきたといえるでしょう。しかし、この先は違います。自動車の性能が向上し、多くの人が運転免許を取得して自由に乗り回すことができるようになったのと同様、いずれインターネットも誰もが安全・安心に使えるようになるはずです。

 そうなれば、人類にとって未知だった産業が花開くことにもなるでしょう。インターネットには便利さの裏に「影」があることは事実ですが、そこにばかりに注目するのではなく、「光」の部分をもっと有効活用するために何ができるかを議論することが大切なのです。

「サイバー3」の3つのテーマとは

 インターネットもサイバーセキュリティも、成長段階でいえば、まだまだ“ヒヨコ”状態。状況は常に変化し、取るべき対策も変わっていきますが、大切なのは継続的に話し合い、議論していく体制を構築することです。サイバー3を東京で開催する最大の目的も、日本がリーダーシップをとり、世界共通の問題に取り組んでいくためのヒューマンネットワークを構築することにあります。

 このイベントの名称、サイバー3とは3つの「Cyber」ということですが、その定義を説明しておきましょう。

 1つめは「Cyber Connect(サイバーコネクト)」です。従来のコミュニケーションツールは、電話と電話のような1対1、あるいはテレビと視聴者のような1対Nの関係性にとどまっていました。しかし、インターネットが実現するのはN対Nのつながりです。

 つい最近まで人類は、地球の反対側まで行くのに何ヵ月もかかっていたのに、今では地球の裏側の冷蔵庫に何が入っているのかをリアルタイムで知ることさえ可能です。インターネットが急速に普及し、国境を飛び越え、法律的にも心理的にも壁がなくなっていくグローバル社会の中で、新たに生じる課題について議論する必要があります。

 2つめは「Cybersecurity(サイバーセキュリティ)」。多くの企業はセキュリティ対策の安全性とコストを重視する一方、インターネットの利便性を軽視しがちです。しかし、システムやソフトウェアの企画・設計・開発段階からセキュリティ対策を組み込むセキュリティ・バイ・デザインで安全性と利便性を両立できるなら、企業はセキュリティをネガティブなコストではなく、自社の価値を高める有力な手段として活用できるはずです。

 最後は「Cyber Crime(サイバークライム)」、つまりサイバー犯罪対策です。国家や組織の枠組みを越えて攻撃を仕掛けてくる相手に対して、私たちも産官学の垣根を取り払って対抗しなければなりません。インターネットは民間のインフラの上に成り立つ珍しい資源です。だからこそ、政府が一方的に実効性の乏しい法律を押しつけるのではなく、また、民間が孤立してローカルルールを乱立するのでもなく、お互いに協力し合うことが大切です。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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