共用のバスマットで感染する
水虫の季節といえばやはり湿気が多く汗をかきやすい梅雨から夏にかけてだが、年中靴と靴下を履き、ときには暖房の効きすぎた部屋で過ごす現代の日本人にとっては、冬でも油断できない。
2007年、日本臨床皮膚科医会が「水虫以外の症状で」皮膚科を訪れた全国の男女約3万5000人を調査したところ、なんと4人に1人が、本人たちが気づかないうちに水虫を発症していることがわかったという。水虫は自覚症状がないまま病状が進行することが多いため、国民病といっても過言ではないほど患者数が増える傾向にある。
むさ苦しい男性がかかりやすいというイメージが強い病気だが「靴&靴下&足の蒸れ」という発症条件は女性も変わらず、むしろそのリスクは男性以上だ。当事者である女性には耳タコかもしれないが、若い女性の間で水虫の患者が急増していて、3人に1人が発症しているという調査結果もある(http://jp.rohto.com/learn-more/skin-trouble/column/tinea-woman/)。
水虫の語源は江戸時代までさかのぼる。水田での作業時に手足に水泡ができてかゆくなることを「水中の虫によるもの」と考えたことから、その症状を「水虫」または「田虫」と呼ぶようになったとされる。今では水田で作業する人の割合は減ったが、下駄や草履の時代だった当事より現代のほうが患者数が多い。それはなぜか。
水虫の原因は白癬菌だ。これはカビの一種で、皮膚の角質層に棲みついてたんぱく質を栄養源に繁殖していく。白癬菌は暖かく湿った環境を非常に好むので、靴と靴下を履く現代人の生活様式は繁殖のためにあるようなものだからだ。
ちなみに白癬菌は、人間の身体のほとんどどこにでも繁殖でき、病気を発症する場所によって呼び方が違う。足、手、爪に感染したものが「水虫」と呼ばれる。太ももの内側に感染したものが「いんきんたむし」、頭部に感染したものが「しらくも」、それ以外が「たむし」と呼ばれる。ただし現代では水虫(足白癬)が白癬菌感染のほとんどを占める。
白癬菌は現代では人から人への感染が一般的だ。例えば水虫を発症した人の皮膚からはがれ落ちた角質(つまりアカ)を踏むと、それだけで菌が付着してしまう。菌が皮膚に付いたからといって必ず発症するわけではない。菌の付いた足を洗わずに放置することで、傷ついた角質から菌が侵入し感染し、やがて発症する。
多くの家庭は浴室の出入り口周辺にバスマットを置いているはずだ。入浴の度に取り替える家庭は少ないはずだから、家族で共用しているだろう。水虫患者が一人いる家庭では、マットを媒介するなどして一家全員が水虫患者になるケースが少なくない。