要約本文

◆プロ野球の経営側と選手側を評価する
◇経営側の評価

 現在の日本のプロ野球は、セントラル・リーグとパシフィック・リーグそれぞれ6球団からなり、約7ヵ月のリーグ期間に試合を行う。この全12球団のうち11球団が登録法人名として企業名を冠している。唯一の例外の読売巨人軍も、「読売新聞巨人軍」ではないにせよ、「読売」が新聞名のため実質的にはすべての球団が企業名を用いていると考えてよいだろう。また通称に限って言えば、巨人と広島を除く10球団で企業名が用いられている。千葉ロッテマリーンズは「ロッテ」、福岡ソフトバンクホークスは「ソフトバンク」といった具合である。このことは球団がどうしても親会社の意向に左右される面があるということを意味している。

 親会社はそもそも広告・宣伝の材料として球団を保有しているのであるし、球団経営が苦しくなったときには親会社の財政支援なくしては存続できない。そのこともあって、球団における管理部門の人事は親会社がかなり影響力を有していると考えられるのである。

 ところで日本のプロフェッショナル野球組織は3つの機関を持つ。「オーナー会議」「実行委員会」「コミッショナー」である。オーナー会議は各球団のオーナーが出席するもので大きな案件が裁かれる。ただし通常オーナーは多忙であるため、小さな案件は各球団から送られてきた実行委員による実行委員会にて決議される。オーナー会議にて選ばれるコミッショナーは組織を代表する人であり、すべての球団・個人はコミッショナーが下す裁定に従わねばならない。コミッショナーは公平性を求められるため、裁判官や検事、警察上がりの人などが多い。

 しかし日本の場合、規則上はコミッショナーが最高責任者であるにもかかわらず、実質的な決定はオーナー会議でされてきており、コミッショナーが飾り物になっているイメージが強い。アメリカにも同じコミッショナー制度があるが、アメリカの場合コミッショナーはかなりの権限を保有して、制度改革にイニシアティブを発揮している。

◇選手側の評価

 選手と球団の契約については、日本のプロ野球制度を規定している野球協約に明記されている。選手と球団との間で交わされる書類は統一契約書と呼ばれ、種々の労働条件が記されている。日本のプロ野球の場合は単年契約が一般的であり、選手は毎年球団と契約を更新する必要がある。選手と球団の関係を雇用者と被雇用者と見る向きもあるが、労働統計上選手は自営業者として扱われている。

 その理由は3つある。1つは、一般企業であれば労働組合の代表が雇用者と賃金交渉を行うのに対し、選手は個々に球団と年俸を交渉するからである。2つ目は、サラリーマンの場合、雇用契約は無期限であることが暗黙のうちに了解されているが、選手の場合原則的に契約は1年ごとであるためだ。そして3つ目は年金の観点だ。以前はプロ野球選手にも企業年金制度が適用されていたが今では加入しておらず、かつ厚生年金にも加盟していない。

 また、従業員5人未満の企業や個人商店などの自営業者は国民年金に加入するのが普通だが、プロ野球の場合加入していない選手が多い。つまり日本の年金制度のいずれにも加入していない選手が多いのだ。その理由は筆者が考えるところによると、プロ野球選手の平均勤続年数は約10年と短いことや、一部の選手は高額の年俸を得ていることから老後に心配をする人が少ないことに起因するのではないかと思われる。また今活躍していない選手は自分が将来活躍し、高い年俸を得るだろう、と楽観的に考えている可能性がある。