長引く不況下、ディスカウント業態が脚光を浴びているが、安売りをせずに業績好調なのがヤオコーだ。パートを含めた全員経営と、手間ヒマかけた惣菜が高い利益率を支えている。

「安易な値下げ競争はしない」。埼玉県を地盤とする食品スーパー・ヤオコーの川野幸夫会長は、こう言い続けてきた。

 小売り業界で、2008年秋のリーマンショック以降、消費者の圧倒的な支持を集めてきたのは、低価格で勝負するディスカウント店。販売管理費を削り価格訴求するタイプで、図(1)の左上に位置するオーケーや大黒天物産がそれに当たる。近年、イオン、西友、イトーヨーカ堂などの大手総合スーパーもその手法に倣ってきた。

 これに対して真逆のビジネスモデルが、付加価値をつけて粗利益を大きく稼ぐタイプ。図(1)の右側に位置するヤオコーはこの筆頭格である。

 18期連続で営業増益を達成し、既存店売上高も業界平均を上回って推移している(図(3)~(4)参照)。しかも、売上高営業利益率で3%を超えるのが難しいとされる薄利の食品スーパーにあって、4.16%という高収益性を誇る。低価格を武器にせず、好業績を上げている稀有な存在だ。

 それでは、付加価値で顧客を引きつけるヤオコーの手法とは何か。

 付加価値とは、まさしく手間ヒマをかけるということにほかならない。数値で読み取れる付加価値の源泉が「惣菜」だ。

 図(2)でわかるとおり、惣菜は原材料を店内で加工するぶん利益率が高い。ヤオコーの商品ごとの粗利益率は、生鮮が28.54%、グロッサリー(食品メーカー商品)が23.38%であるのに対して、惣菜は49%に上る。

 注目すべき点は、他の食品スーパーでは、商品供給に占める惣菜のシェアは10%前後にすぎないが、ヤオコーでは14%あることだ。

 惣菜が支持される理由は、「おいしい」ということに尽きる。そのため、「味、できたての提供、均一な品質の三つを徹底的に追求してきた」(ヤオコーの惣菜加工子会社、三味の小平昭雄社長)。