SAS Instituteが発表した、企業内のデータの流通を調査するアプリケーション「SASビジュアル・インベスティゲータ」とはどういうものか。製品担当のライアン・シュミーデル氏が来日して説明した。
肥大化・複雑化する企業の不正を
アナリティクスで解決する
あらゆるビジネスがデジタル化され、大量のデータがさまざまなシステムに秒刻みで蓄積されている。それに伴って、企業が事業計画を立てたり、企業内の不正の調査を行う場合も、膨大なデータを調べ上げなければならず、人間の作業ではもはや不可能なボリュームと複雑さになってきている。
データ分析ソフトウェアを長年にわたり開発してきたIT企業のSAS Institute(以下・SAS)では、約15年前からデータアナリティクスによって企業内の調査を行うシステムを開発・提供してきた。当時は国を跨いだ「マネーロンダリング」(資金浄化)の問題が世間をにぎわしており、不正な海外送金を監視する仕組みが求められていた時である。また同時期には、クレジットカードの不正利用が社会問題化し始め、データの抜き取りによる不正使用をリアルタイムに検知、通報するシステムの構築が急務だった。SASでは金融機関向けを中心に、そうしたニーズに応える製品を提供してきた。
SASで製品開発とマーケティングを統括するプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのライアン・シュミーデル氏は、同社の調査・分析ソリューションの歴史について次のように語る。
「約15年の取り組みの中で、たくさんのことを学ぶことができました。分析エンジンが優れていることはもちろん必要条件ですが、アナリティクスを企業内のアナリスト(調査員)は、どうすれば操作しやすくなるのか、インターフェースの改善も必要です。そして何より大事なのは、分析結果が企業の意思決定にどう結びついたのかという結果です。その関係を記録しておくことも非常に重要です」
一方、冒頭にも書いた通り、デジタル化が急速に進むここ数年で、データ量は膨大になり、画像、動画、ソーシャルメディアなどデータの内容も複雑さを増している。そこでSASも、クラウド、ビッグデータ、IoTの時代に対応する新しい発想のソフトウェア基盤が必要だと考えていた。そして、解決策として今年9月に発表したのが、「SAS Viya」(SASヴァイヤ)という名の新しいプラットフォームである。
Viyaは、SASが長年取り組んできたアナリティクスの知見を活用することができるデータベースと、それをユーザーが操作するインターフェースを備えたデータ基盤である。SASが得意としてきた自然言語の分析技術などを用いて、従来は直接分析できなかったデータも、その意味を紐解いてインデックス化することができる。そして、格納したデータの中から、これまで関連付けられることがなかった複数のデータの相互の関連性も発見することができるようになる。
また、Viyaはクラウドに対応しており、専用サーバーを持たなくてもSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)として月額課金で分析機能を利用することもできる。SASを使うには高速な分析用マシンが必要という敷居の高いイメージが、Viyaによって解消するのか気になるところだ。
SASでは、Viyaの基盤で動くデータ分析の統合アプリケーション(スイート)の第一弾として、「ビジュアル・インベスティゲータ」(SAS Visual Investigater)を10月にリリースした。その名の通り、さまざまなデータを格納し、全社的な調査を自動的に行って結果をグラフィカルに表示するアプリケーションだ。日本には来年春の導入予定である。