「働いたら損」の気持ちが
不正受給の温床の1つに

 総務省の『生活保護に関する実態調査 結果報告書』のPDFファイルで63ページの表「不正の内容別不正受給件数の推移」を見ると、件数での第1位と第2位は「稼働収入の無申告」「稼働収入の過少申告」で、いずれの年も全体の50~65%を占めている。なお「パチンコで勝ったのに収入申告していない」は、「その他」に含まれているものと考えられるが、表にある6種類の区分のいずれにも当てはまらない「その他」は、全部合わせて10~15%程度である。

「制度に問題があるから不正受給は仕方がない」と言う気はない。しかし、就労意欲がある人もない人も、良心的な人もそうでない人も、ありとあらゆる個人の違いを「生活保護だから」に押し込めて制度を設計すること・運用することの非人間性が、不正受給も含めて様々な問題を生んでいる。そのように考えるべきではないだろうか。

 では、何らかの事情で生活保護を必要とするようになり、働ける範囲で働こうと決意した人々には、どのような就労が可能なのだろうか。

 まず、生活保護を必要とする状況に陥る人は、小学校中途からの不登校・経済的理由による進学の困難・障害・病気・高齢など、様々なハンディキャップを背負っていることが多い。このため、生活保護を一気に脱却できるほどの就労は、特に子どものいる世帯では困難なことが多い。単身者で「可能な場合がある」という感じだ。

 それでも本人が努力し、周囲の支援もあり、就労が可能になったとしよう。就労収入に対して「収入認定」があり、ひとことで言えば「生活保護よりマシな暮らしは許さない」「働いたら損」となっていることは冒頭で述べた。

 この上に、就労することそのものに対しても、様々なハンデが設けられている。もちろん、当初は「就労阻害」という意図で設けられたものではなかったのだろう。しかし現在の運用を『生活保護手帳別冊問答集 2016』で見てみると、「これで……就労促進?」という記述が並ぶ。

 たとえば、「問8-18 収入を得るための必要経費の判断」という項目には、外交員の手土産・商店の歳暮・保育児送迎のための交通費の3つが挙げられており、これらを必要経費と認めてよいかどうかに関する解説がある。

 外交員の手土産・商店の歳暮については、「成績をあげ、収入の増加をもたらす手段として」の必要性も考えられるが、限度や効果の測定が困難なため、必要経費として「一般的には認められない」となっている。