第2次安倍内閣が成立して以後、「子どもの貧困」と解消の必要性へ注目が集まる一方、生活保護を含め、社会保障の削減と貧困の拡大が進みつづけた。この間の変化は、シングルマザー世帯に、何をもたらしているのだろうか?

「子どもの貧困」への関心に
虚しさを感じる6児のシングルマザー

6児のシングルマザーであるYさんは、この2年数ヵ月で月2万円も生活保護費が削減されたそうです

 千葉県A市に住むYさん(37歳)は、高校1年~小学4年の6人の子どもとともに生活保護で暮らすシングルマザーだ。

 Yさんは、中学時代に母親を失って以後、一家の主婦業・弟妹の母親業一手に担いながら、高校と保育の専門学校を卒業し、保育士資格を取得した。公務員試験にも合格し、市職員として保育所で働き始めた。しかし結婚した夫から肉体的・精神的DVを受け、経済的にも「搾取」と呼ぶべき扱いを受けた。また、夫が避妊に協力しなかったことから、7年間に6人の子どもを出産した。育児を一手に担ったのはYさんだ。

 夫のDVにより職業・健康など数多くを失ったYさんと、同じく父親からのDV被害を受けていた6人の子どもたちは、生活保護に支えられ、2014年、母子世帯として新しい生活に踏み出すことができた。この経緯は、本連載第14回で詳しく紹介している。

 このとき、大きな障壁となったのは、一家7人が暮らすことのできる住まいを探すことであった。7人世帯に対する生活保護の家賃補助の上限額は、A市では5万9800円。家賃相場がそれほど高くないA市ではあるが、女の子と男の子のスペースを別途確保できる住まいは、その金額では見つけられない。しかし、窮状を知った家主の好意によって、「健康で文化的」の基本といえる住環境が、家賃5万9800円で提供されることになった。当時の住宅扶助(生活保護の家賃補助)の上限額ギリギリである。

 Yさん一家にとって、安倍政権の3年半とは?

「……『子どもの貧困』に対する関心が、虚しいです」(Yさん)

 安倍政権が成立した2013年6月、「子どもの貧困対策法」が成立。翌2014年8月には、「子供の貧困対策に関する大綱」(本大綱では「子ども」ではなく「子供」と表記されている)が閣議設定された。2013年12月、改正生活保護法とともに成立した生活困窮者自立支援法でも、都道府県は「生活困窮者である子どもに対し学習の援助を行う事業」を行うことができる、とされている(第6条)。

 なぜ、Yさんは「虚しいです」と言うのだろうか? 往年のドラマ「家なき子」の名セリフ「同情するなら金をくれ!」になぞらえれば、「同情する」と「もっと貧乏にする」が、同時進行しているからだ。