既婚男性は、「残業」を理由に家に帰らない

 男性社員が定時に会社を追い出されると、家事や育児を手伝うことになります。
 けれど残業があれば、家事や育児をしなくてもすみます。

 また、「家に居場所がない」「妻が怖い」と思っている社員は、わざと残業を多くすることがあります。

 末吉ネームプレート製作所の沼上社長は、「以前は、営業マンの仕事の見える化がされていなかったので、なぜ残業するのか、何が忙しいのか、理由がわからなかった」
  と言います。

「いつも遅くまで会社に残っている営業マンをつかまえて、『どうして早く家に帰らないのか』を問いただしたら、彼はこう答えた。
『家に帰ると、家庭の仕事をさせられる。だから、帰りたくない』。
 遅くまで会社にいれば、家の仕事をしなくてもすみます。だからダラダラと会社に残っていた」(沼上社長)

 タイムカードを先に押して帰ったフリを装い、実際には会社に残っている社員もいたそうです。

 そこで沼上社長は、事前の残業申請やタイムカードと実際の退社時間のチェックを徹底。
 さらに、残業を賞与に連動させて、「残業が多くなると賞与が少なくなる」ルールを決めました。

 その結果、「家の仕事をしたくない」という理由で残業を続けていた社員も、早く帰るようになったそうです。

独身社員は、さびしい思いをしない

 家に帰ってもすることがないから、残業をする独身社員がいます。
 早く帰ってもさびしいだけですが、会社には人がいるので、さびしさが紛れます。

同僚に話しかけられて集中できない

 仕事中に、やたらと話しかける同僚や上司がいます。仕事をしていようが、電話で話していようが、お構いなしです。
 同僚や上司との雑談は、信頼関係を築くうえで大切ですが、長時間のおしゃべりは、仕事の手を止めるだけです。

上司が「帰りにくい雰囲気」をつくっている

 社内に「残業するのが当たり前」という雰囲気があると、仕事が早く終わっても、「なんとなく帰りにくい」と感じることがあります。
 全社を挙げて残業ができない仕組みをつくり、強制的に早帰りをさせることが大切です。

 入社6年目の国松美夏は、「残業改革が始まって一番変わったことは、『帰りやすい雰囲気になったこと』だ」と話しています。

「今は経理ですが、以前はダスキン小金井支店の内勤で、みなさんより早く帰っていました。
 当時の残業は月に30時間くらいで、営業の社員に比べたら少ないです。それでもみんな遅くまで会社に残っているので、『なんとなく帰りにくいな』と思いました。それに、武蔵野はみんな仲がいいので、居心地がいいんです。なので、ダラダラと残ってしまいます。
 ところが今は、上司からも『早く帰れ』と言われます。強制的に早く帰る仕組みがあるので、気兼ねせずに帰れます
 私自身、『早く帰らなければいけない』という気持ちが強くなったので、『早く仕事を終わらせるために、どうすればいいのか』を同じ部署の人たちと考えるようになりました。その結果として、仕事の効率も上がっていると思います」(国松)