大学生の就職内定率が1996年の調査開始以来、過去最低の水準にあるという。新卒の学生にとって就職の門戸がますます狭くなる一方で、入りやすくなっているのが大学院だ。
きっかけは91年、文部科学省の大学審議会が、大学院の量的整備の緩和を答申したことにある。従来は研究者養成機関と考えられていた大学院に、高度職業人を養成するための夜間大学院や専門職大学院などが加わり、その定員数は大幅に拡充された。結果、有名校の大学院でさえ定員割れが起こる事態にもなり、なかには面接だけで楽に入れる大学院も出てきているという。
この事態を「大学院のレベル低下だ」と嘆き、「けしからん」と憤慨する人がいる。
しかし、である。
中卒や高卒、専門学校卒、あるいは名もない大学を出たばかりに社会の中で実力が思うように発揮できす、苦しみ、悩んでいる人がいるならば、これはめったにない挽回のチャンスではないのか。
そう考える1人の予備校講師が2009年12月、一冊の本を上梓した。
タイトルは『「学歴ロンダリング』実践マニュアル』(オクムラ書店)。副題には「最短で憧れの学歴を手に入れる方法」とある。
たまご→「たまごーかく」でゲンかつぎ!?
独身・予備校講師(39歳)の合格祈願弁当
「白米は白星で縁起がいいでしょ、ウインナーはwinner(ウィナー=勝者)、イカリングとちくわは○がいっぱいで、カルボナーラはうかるボナーラ……」
箸を片手に、赤田達也さんがお弁当を解説する。39歳、独身。先に紹介した本の著者でもある。
「では、その卵はなんでしょう?」
「たまごーかく、ですね」
海苔は「黒星」と忌み嫌うこともできるが、考えようによっては「ノリノリで勉強」「ノリノリで合格」とも言える。そんなことを、日夜まじめに考えている。