しかし、日進月歩で新しい医療技術は開発されている。他に治療法のない患者の中には、評価が定まっていなくても新しい治療を受けたい人もいる。そうした患者の利便性を図るという名目で、例外的に作られたのが「保険外併用療養費」だ。

 厚生労働大臣が認めた治療法については、健康保険の適用前でも保険診療との併用を認め、その治療は自費になるけれども、その他の診察や検査などには健康保険が使えるようにしたのだ。この健康保険適用前の治療が「先進医療」だ。

 たとえば、先進医療のひとつに陽子線治療がある。水素の原子核である陽子をがん細胞に照射する放射線治療の一種だ。従来のX線治療よりも副作用が少なく、狙った病巣に集中して照射できるため、がんの治療法として期待されている。この陽子線治療を行っている筑波大学付属病院・陽子線医学利用研究センターのパンフレットには、肝臓がんの治療成績がこう記されている。

≪肝臓がんに対する陽子線治療の成績は良好で、陽子線治療を行った腫瘍の約9割は治ります。陽子線治療による副作用は軽微で、あるていど肝機能が低下している患者様に対しても安全に治療することができます。しかし、他部位への癌の発生や、もともと肝硬変の状態が生存に影響します。肝機能が良く、がんが1個しかない患者様の5年生存率は手術ほぼ同等の54%でした。≫

 陽子線治療は、身体にメスを入れないので治療の痛みがなく、抗がん剤治療による吐き気などの副作用がないため、身体への負担を抑えられる。ただし、診療後の5年生存率は、外科手術など他の治療法と比べて特に優位ということはないようだ。

 一般的な感覚では、「標準」よりも「先進」のほうが優れているイメージが強いかもしれない。しかし、医療の世界では、標準治療は科学的な根拠に基づいて、現時点で利用できる最良の治療法のことを指している。

 先進医療は新しく開発された治療ではあるけれど、健康保険を適用するための評価段階のものなので、その効果は未知数だ。それまでの標準治療よりも優れていると証明されれば、その先進医療が今度は標準治療になっていく。

まとめ⇒ 先進医療は健康保険に収載するかどうか評価段階の治療で、とくに優れた医療を指すわけではない。