原作の発表後にわかった史実を
映画の中に付け加えていく

──確かに映画で、原作の中になかった描写がいくつかありました。それらは原作で描ききれていなかった“裏の風景”を見ようという意図もあった?

 そうですね、原作の描かれ方としてまず、こうのさんがこの時代の年表みたいなものをご自分で作っていらっしゃるんですよ。毎月毎月どういうことが起こったのか、その上に登場人物たちの行動を重ねてストーリーを作っていらっしゃるのですね。

 ということは、我々の方でその年表にさらに補足できる事実がわかったならば、その同じ上に、すずさんたち登場人物もいるはずなんですよ。すずさんたちがいる時間というか空間というかは、本当にあった歴史の上だと僕は思うことにしているので、本当にあった歴史でさらにわかった部分があるのならば、そのうえにすずさんを付け加えるということもありなんじゃないかなと思っています。

 たとえば、昭和20年の3月19日の呉空襲のときは、爆弾が海に落ちたあとに魚がたくさん浮いて、漁師が出てきて魚を獲っていたという話を見つけたから、それも付け加えてみたいなと。原作にはないんですけど、そんな面白いことがあったのなら、すずさんの行動の上にそれを映してみたいと。

──空襲のシーンでは、対空砲火の煙が色とりどりだったという描写も原作にはないですね。煙に色を付けて、どの砲台から撃ったのか判別できるようにしていた、とか。

 色とりどりの煙の話は、こうのさんもご存じでしたよ。ただ、漫画は白黒なので、描けないっていうだけのようです。

 当時、呉の空襲を体験した人の話が何冊か呉市から出ているんですけど(資料を取り出しながら)、その中にあの日の空襲の対空砲火の煙が色とりどりだったというのは日本側の下にいた人たちも書いているし、それから空の上にいたアメリカの航空隊の人も同じように書いているんです。こうのさんはこういうのもご存じで、読んでいらっしゃるので、そういう意味で言うと新しく付け加えたというよりは、よりそこで詳しく描くことができたっていうことです。

漫画に描いた大砲の実際の場所を、作者のこうのさんも後で知りたがったという Photo by T.K

 こうのさんも例えば「この大砲がどこにあるのかもうちょっと自分でわかっていたらもうちょっと詳しく描けただろう」とおっしゃっているんですよ。漫画の、すずさんがアメリカの飛行機が飛んで来るのを見上げるシーンでは、この山はすずさんの畑の真正面にある山なんですね。「あ、だとしたらすずさんの頭越しに撃つとかっていう描写もあることになるんじゃないかな」とか。そうしたことを、映画では付け加えていっているだけなんですね。

──それと、白黒の漫画に色がついたことで、表現力が増した面もありますね。例えば原作では色のなかったトンボが、映画では夏にはシオカラトンボ、初秋には赤トンボになっていたり……。

 そうそう、そうですね!(笑)