手っ取り早く結論を出さず
自分で考えて解決する

 一方で、学生にも課題はある。自ら考えて課題を発見し、解決するような主体的な学び方が十分できていないという。

「LINEのように、短い情報のやり取りでコミュニケーションが成立するようになったからか、じっくり文章を読む忍耐力や、仲間と長い時間議論をしたり、論理的に長文を組み立てていく力が弱くなっているように感じます。また、Youtubeのようなわずかな時間で完結する動画に慣れてしまっているせいか、グループワークなどで議論をしていてもすぐに結論を求めてしまい、議論が長くなると飽きてしまう傾向も見られます」

 こうした問題をなんとかするために、政府は「働き方改革」と同時並行で、主体的な学習者を育てる「教育改革」にも力を注いでいると考えられるだろう。

「技術の発達で、単純かつ一方的に教えるだけなら人工知能でも可能になるでしょう。そうではなく、人と人との対面でなければできない授業が求められています。これって、企業の会議の問題と同じだと思いませんか。対面でしかできないことは何か、ということに対して、より自覚的にならなければならない時代といえるでしょう。

 主体的な学習者を育てる教育改革の最大のポイントは、知識を一方的に押しつけて学習させるのではなく、学生自らが課題を発見し、解決することに重点を置いた教育です。私の大学ではそうした教育に力を入れていますし、私のゼミでも、フィールドワークをやりながら自分たちで課題を見つける力を養うことに力を入れています。学生には『フィールドワークで集めてきた事実を様々な角度から解釈し、自分なりの言葉で意味づけることが大事。答えはない』と説明していますが、答えがないことに不安を感じる学生も多い。ネットに書かれている情報に答えを探しに行くのではなく、現場にこそリアルがある、ということに早く気づかせることが大切だと考えています」

 ビジネスの現場では、取引先の課題を発見し、そのソリューションを提案するといった付加価値の高い仕事が要求される。いずれそうした中に飛び込んでいくなら、学生は主体的に学ぶ力を養っていくしかない。一方、企業にはITツールを生産性の向上に生かすとともに、社員の能力を引き出すキャリアカウンセリングや、イノベーションを生み出す創造的な「対話」の場を設けることが求められる。その両方が満たされなければ、日本の将来を支える強いビジネス社会を作ることは難しいはずだ。

(取材・文/河合起季 撮影/平野晋子)