昨年発生した尖閣問題を機に、日本と中国の関係は冷え切ってしまったように見える。中国は日本経済にとって、最も重要な国の1つだ。ここにきてようやく関係回復へ向けた冷静な議論が交わされるようになってきたものの、日中間に生じた溝を埋めるのは容易ではない。政府や企業は、今後中国とどのように付き合っていけばよいのか? 長い議員生活を通じて日中関係の強化に取り組んできた河野洋平・前衆議院議長は、政界を引退した今も、日中の人脈づくりに精力的に取り組むキーマンである。「利害を越えて真の信頼を構築することこそが重要」と語る河野氏の、深い経験に裏打ちされた指摘に耳を傾けよう。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也・原英次郎、撮影/宇佐見利明)

中国は歴史的に日本と近い国
シンパシーは自然に強くなった

こうの・ようへい/1937年生まれ。神奈川県出身。早稲田大学卒業。67年自由民主党から出馬し、衆議院議員初当選。76年自民党を離党し新自由クラブ代表に就任、86年自民党に復帰。科学技術庁長官(中曽根内閣)、内閣官房長官(宮澤内閣)を務め、93年の政権交代に伴い野党自民党総裁に就任。94年自社さ連立で政権に復帰した後、副総理兼外務大臣に就任。その後も外務大臣(小渕内閣、森内閣)を務める。2003年から2009年まで日本憲政史上最長となる衆議院議長を務める。09年政界を引退。現職は日本国際貿易促進協会会長、日本陸上競技連盟会長など。

――河野さんは、長い議員生活を通じ、一貫して日中関係の強化に取り組んできました。そもそも政治家として、中国のどこに魅力を感じたのでしょうか?

 日本と中国は、歴史的にも地理的にもとても近い国。日本人が中国に興味を持つのは、何も特別なことではないと思います。

 私について言えば、身内に日本と中国の関係を重視する人がたくさんいたことに、影響を受けた側面があるかもしれません。父の河野一郎、叔父の河野謙三は、日本と国交がない時代から、中国に注目していました。

 また、政治家になってからも、田川誠一さん、宇都宮徳馬さん、鯨岡兵輔さんなど、中国との関係づくりに熱心に取り組まれる方々に、多くのご指導を受けました。

 そういった環境に身を置いていたため、中国に対するシンパシーは、政治的にというよりも自然に強くなりましたね。

――昨年、日中間で発生した「尖閣問題」を機に、日本と中国の関係は冷え切ってしまったように見えます。しかし中国は、日本経済にとって最も重要な国の1つです。ここにきて、ようやく関係回復へ向けた冷静な議論が交わされるようになってきましたが、日中間に生じた溝を埋めるのは容易ではないという印象があります。どうすればよいでしょうか?